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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「えーっと、確かここに……あっ、あった。よいしょっと……」

前にあの子から貰ったあの服が、クローゼットの奥の方にあった……わ、可愛い。
サイズが同じだって言ってたけど、本当に同じなんだ……

「着てみようかな……」

せっかく貰ったんだから、やっぱり着てみなきゃ。
これで戦いに行くのは難しいかもしれないけど、普段着る分にはいいかな。



「……なるほど、それで迎撃したわけか。」
「ええ……ですが、その後弓が壊れてしまって、大変だったんですよ。」

昔の話を雪乃とする。まだ我と会う前の話だ。かつて雪乃も一人で戦っていた。
そして放浪している時に我と出合った。今思えば、不思議な偶然なのかもしれない。

「咲耶ちゃん、雪乃ちゃん、見て見て~!」
「ん?……それは、あの娘の服か。」

と、話している時に幽羅が来た。
以前森に異変が起き、そして解決の為にポウ邸宅を訪れた……
その時に会ったあの吸血鬼の娘から受け取った服を着ている。
思えば体格が似ていた気がしたが……なるほど、確かに大きさは同じだったか。
……幽羅が大精霊になる前か。まだ最近の事のはずなのに、妙に前の事のように思えるな……

「あ、着てみたんですね。とてもお似合いですよ、幽羅様。」
「えへへ、ちょっと動きにくい所があるけど、可愛いからいいなぁって。」
「可愛い、か……」

以前であれば、あの様に見た目を気にすると言う事は無かった。
まぁ、元よりそう言う概念が無かったのだが……人として生きるのであれば、多少は必要だ。

「咲耶ちゃんももっと可愛い服とか着ればいいのに~。」
「……我には似合わんよ。」
「そうかなぁ、似合いそうだけど……ほら、お出かけ用の服とかもっと着ればいいのに~。」
「……まぁ、気が向いたらな。」

元々戦いに出る事が多く、用も無しに街に出る事は少ない。
幽羅はよく散歩に出かけるが……我はそうでもない。

「よ~し、ちょっとクローゼットの中とか探してみようっと。」
「……程々にな、幽羅。」

今更の事だが、この館には元から服がそれなりにあった。
大きさが合わないのが殆どだが、中には着られる物もある。
……とは言っても、詳細まではよく分からない。
ここの元主人はそういうお洒落が好きだったんだろうか?

「お洋服も、大分数が増えてきましたね。」
「そうだな……大体は幽羅が買ってくるのだが。」
「ふふっ、そうですね。でも、確かに咲耶様はあまり他の服を着ませんね。」
「……まぁ、あまり興味は無いからな。」

元々精霊には服装等を気にする概念は無い。人間とは根本の思考も違う。
そう考えると、我と幽羅はある意味異常とも言える。
……まぁ、その事を他の精霊達は理解しているだけに、何も言われないのだが。

「あら、折角人の体を持っているのにもったいないわね、咲耶。」
「……幽羅、その真似は少し心臓に悪いぞ……ん?その眼鏡はどうしたんだ?」

エアリナの真似をして戻ってきた幽羅は、大精霊としての服に、
アルフォードから大精霊になった祝い品として貰った帽子を被っていた。
更に手には赤い大きなリボンを持っている。そして何故か眼鏡を掛けていた。

「使ってない机の引き出しの中に入ってたんだ。伊達眼鏡みたいだけど。」
「……ただの飾りか。で、そのリボンも見つけたのか?」
「そうだよ~。これは絶対咲耶ちゃんなら似合うと思う!」

何故か自信があるような言い方をする幽羅。あれを我に着ける気か……
まぁ、たまにはいいかもしれないな……

「……分かった。それじゃあ、お願いするよ。」
「うん!」

幽羅に任せ、リボンを着けてもらう。これぐらいなら、まぁ気にならないか……

「これで……はいっ、出来あがり!」
「可愛い……似合ってますよ、咲耶様。」
「そ、そうか?」
「うんうん、鏡で見れば分かるよ~!」

似合っている……のか。鏡の前に立ってみる。
可愛らしい大きな赤いリボン。なんとなく、少し幼くなったように見える。
……物一つでここまで印象が変わるのか。

「ね、こういうのもいいでしょ?」
「まぁ……悪くないな。」

流石に戦いに行く時にこれは問題だが、何も無い時はいいかもしれないな。
後で着け方を聞く事にしよう。

「ただいま戻りま……わっ、咲耶様、そのリボンどうしたんですか?」

鏡を見ていた時、羽衣が買い物から帰ってきた。

「おかえり、羽衣。幽羅が見つけてきたんだ。」
「すっごい似合ってますよ!あ、でもそのリボンならあの服……
 僕と初めて会った時に着ていた服の方がもっと合うと思いますよ。」
「あ、それいいかも!ね、咲耶ちゃん、あの服に着替えてみようよ!」

……何だか盛り上がってきたな。まぁ、たまにはこういう日もいいものだ。

「ふふっ、何だか楽しくなってきましたね。」
「そうだな。しかし殺伐とした日々を送るよりいいだろう?」
「ええ、そうですね。」

こんな時ぐらいは、戦いの事を忘れて楽しむのもいいかもしれない。
……その方が、気が楽だ。
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