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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「う~……」
「……大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃないよ~……」

やはり、幽羅は相当緊張している。無理もないが……
アルフォードが神界への門を開けている途中、落ち着きが無かった。

「しかし、今そんなに緊張していると、いざ神々を前にした時何も出来なくなるぞ?」
「分かってるよぉ……はぁ~……」
「お待たせ!門を開いたよ。」

アルフォードの前に光の門が出来ていた。その先に白い部屋らしき風景が映っていた。
……城の準備室か。懐かしいな……我もかつてはこの部屋で緊張したものだ。

「……ふふっ。同じ気持ち、か……」
「咲耶ちゃん?」
「似ているんだ。昔の我と、な。我も最初は緊張したのだぞ?」
「うーん……そっか。咲耶ちゃんもやっぱり緊張してたんだ……」

今の幽羅に、過去の我の姿が重なった気がした。
大精霊になって、最初の仕事……か。本当に、懐かしいものだ……

「何、胸を張っていけばいいさ。気を楽にな。」
「うん……頑張るよ!」
「さて、それじゃあ二人とも行こうか。多分、もう皆揃ってると思うよ。」

我と幽羅は頷き、光の門をくぐる。流石は神王の作る門、違和感なく準備室に移った。

「うわぁ……ここがお城の中かぁ……」

準備室と言えど、整理されていて装飾も煌びやかだ。
白を基調にした空間。前にある扉の先は、神々が集う会議室だ。

「やっぱり、もう揃ってるね……それじゃ、幽羅ちゃん。」
「は、はいっ!」
「幽羅。」

一度、扉の前で幽羅に声を掛ける。我はここで留守番だ。

「……お前らしさを見せてくればいい。自分の思うがままに、な?」
「うん……分かった。」

頭を少し撫でる。少し、幽羅の表情が柔らかくなった気がした。

「それじゃあ、行ってくるよ。」
「ああ。しっかりな。」

会議室への扉が開かれる。微かに聞こえていたざわめきが消え、視線が集中していた。
そうして幽羅とアルフォードが中に入り、そして扉は閉まった。拍手だけが聞こえる。
我は近くにあった椅子に座り、ふと、天井を見上げた。

「……昔の我、か。」

……大精霊になった頃の我。まだ大精霊としての身分や力について、知らなかった頃。
今の我と比べれば……まだ、純粋だったか。
幽羅には、その純粋さを失って欲しくない。我は……我の身体は、酷く染まっている。
同じ道は、通って欲しくない……

「幽羅……お前なら……」

目を閉じ、記憶を蘇らせる。かつての我の姿を……



信じられない……と言うか、もう何が何だかさっぱり。
あたしの目の前に、神界の偉い人たちが……
神王様が何か言ってるけど、耳に入らない。

「……それでは、神樹幽羅殿からお言葉を頂きたいと思います。」

その神王様の言葉でハッとなった。お言葉って……な、何か話さないといけないんだよね……
壇に上るように言われて、上った。うぅ、皆見てる……

「え、えっと……」

声が響いてる。下手な事言えない……うぅ、何も思いつかないよ……

「……皆さん、今日はお集まりいただき、ありがとうございます。」

とりあえず、出だしはこんな感じでいいかな……えっと、次は……
そうだ、今回の引継ぎは突然だったから……

「まず、事前の告知無しに引継ぎを行い、皆様にご迷惑をお掛けした事を、お詫び致します。
 ですが、その理由も皆さんご存知かと思います。あたしは、エアリナ様の意思を引き継ぎ、
 こうして風の大精霊となりました。」

うん、これで……いいよね。非常事態だったし……

「あたしは、エアリナ様が叶えられなかった事を叶えるために、これから頑張って行きたいと
 思いますので……皆さん、よろしくお願いします。」

こ、これでいいかな……お辞儀して……凄い拍手……
やっぱり、風の大精霊なんだよね、あたし……
壇を降りて、椅子に座る。何だか、ようやく落ち着いてきた……
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