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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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夏といえば海……と言うが、まだ我は入った事がない。
丁度よく休暇を取っている。この機会を逃す事はないだろう。
何しろ、幽羅がいるからな。用意周到と言うべきか……

「……それで、我にこれを着ろと?」
「うん。」
「……本気か?」
「本気だよ。」
「……勘弁してくれないか……」

で、こんな露出の多い水着を着ろと言うのだから。
……確かに、見回せば似たような水着を着ている人間はいる。
だが、我がこんな……胸を強調した、桜の色をした水着を……
下に至ってはもうなんと言うか……これは、大丈夫なのか?
顔が熱くなるのを感じる。

「えぇ~?すっごく似合うと思うのにぃ。」
「い、いやな……わ、我も恥ずかしさはあるのだぞ?」

幾らなんでも、これは……恥ずかしい。
元々我自身、露出の多い格好は好まない。水着だから仕方ないのかもしれないが、これは……

「でも、水着これしかないよ?」
「……む、むぅ……」
「折角ですし、ここは一つ勝負してみてはいかがでしょうか?」
「……雪乃、何か勘違いしてないか?」

……ま、まぁ、せっかくの機会を逃すのはもったいないな。
ここは一つ、覚悟を決めて着替えてくるしかないか……



「……なぁ、幽羅。」
「なぁに?」
「先程から男共の視線が凄まじいのだが。」
「うーん……まぁ、確かに。でも海に入っちゃえば大丈夫だよ!」
「その根拠が何処から来ているが知りたいがまあいい。」

そう、男共の視線。胸なんだか股なんだかは知らんが。
まぁ……あれが男の性、とでも言うのだろうか。
そのせいで余計に恥ずかしい思いをしている。

「わぁ……おっきいなぁ……」
「本当だな……やはり、こうして身をもって体験するのが一番だな。」

そんな恥ずかしさも、この海の広大さからすればほんの些細な事だろう。
見渡す限り広がる蒼い世界。空の青とはまた違う、深い群青の世界。
波打ち際。足が海の方へと吸い寄せられるような、不思議な感覚。
これが、全ての母となる海。身をもって感じる奇跡。

「えいっ!」
「ぬあっ!?」

が、そんな感覚も幽羅の悪戯で途切れてしまった。
水を掛けられ、ひんやりとした感覚が急に襲ってきたのだ。

「幽羅!お前という奴は!」
「えっへへ~、だって咲耶ちゃん、ぼーっとしてるんだもん!」
「こ、このっ!」
「きゃっ!?」

お返しとばかりに思いっきり水を掛けてやった。
頭に掛かったのか、髪型が変わってしまっている。

「やったなぁ~!そぉれ!」
「何をっ!てやっ!」

それから暫く、我と幽羅は少々激しい水の掛け合いをしていた。
……まるで普段の我から解放されたような、そんな気分だった。



「雪乃ちゃんも入れればいいのにね~。」
「そうですね……でも、私はそこまで体が強くないので……」
「まぁ、確かにな。今は日陰にいるからいいが、この日差しを直接は辛いだろう。」

雪乃は適当な場所を取り、パラソルの下で海を眺めていた。
種族が種族であるがゆえに仕方ない事だろうが……

「つまらないんじゃない?」
「いえ、いいんです。こうしてゆっくりと海を眺められるだけでも、十分ですから……」
「そっかぁ~。」

まぁ、雪乃なりの楽しみ方があるのだろう。
それに、無理をして倒れられても困る。

「ね、カキ氷食べようよ!私一度こういう所で食べてみたかったんだ~!」
「ふむ、それもいいな。適当な売店で買うとしよう。」

その後はカキ氷を食べて少し頭を痛くしてみたり、
丁度開催されていたビーチバレー大会を見たりしていた。
……なるほど、こういう競技も中々面白そうだ。
あっという間に時間は過ぎていっていた。
……人で言う所の童心に帰るとは、恐らくはこの事なのだろうな。
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