それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
暗いリビング。時計の針の音だけが響いている。
私は眠れなかった。咲耶様と幽羅様の事が、ずっと心配だった。
窓ガラスが揺れる。風が強い。引継ぎが、上手く行ったのかどうか……
「……帰って、来てくれますよね……?」
昔の事を思い出す。一人ぼっちだった私。
当てもなく放浪していた時に、咲耶様と出合った。
優しい眼をした咲耶様のあの顔は、今でもはっきり覚えている。
それから、少し後……幽羅様にも出会った。
家族みたいな……いえ、もう家族そのもの……
「……あれは……」
ふと、窓の方を見た時……何かが窓の間に挟まっている。
これは……封筒?近くにあったランプに火を灯す。これは……桜木の空間からの……!
急いで開いて、中の手紙を見る。そこには、
『幽羅は無事だ。それと、少々帰るのに時間が掛かる。そちらは二人に任せるぞ。』
とだけ、書かれていた。
幽羅様は無事だった……それが分かっただけで、急に気分が軽くなった。
後は、精霊としての仕事が待っているんでしょう……
「……二人で、頑張りますね……」
手紙を胸に、私はそっと、涙を流した。
空間は大変な騒ぎになっていた。無理もない、突然の引継ぎだったのだ。
だが、どうやらまだ誰も聖域には入っていないようだった。
「おぉっ、咲耶様!」
「幽羅はどうした!誰か、様子を見に行った者はいるか!?」
「い、いえ……まだ誰も……」
その場に居た上位の風の精霊達は、他の処理に追われているようだった。
正規の手順を踏まずに行った……それの影響もあるのだろうか。
「幽羅は我が見る!他の者達は状態の復帰を!」
我の声で風の精霊達が一斉に動き始めた。
我は聖域へと急ぐ。場所は……感覚で分かる。
中央を飛び、森の奥へ。細い道を抜けていく……
「幽羅っ!」
開けた場所。ここが聖域……その中心に、幽羅が倒れていた。
虚ろげに夜空を見つめていた。意識は、あるのか……?
「大丈夫か、幽羅!」
「……さ……くや、ちゃん……?」
意識はあったが、声は掠れている。
幽羅の体を抱えようとした、が……
「お願い……もう少し……ここに、いさせて……」
「幽羅、お前……」
その言葉の重みは、普段の……今までの幽羅とは違う。
間違いなく、これは大精霊としての言葉……
我は幽羅に膝枕をした。このまま寝させるのは心苦しい。
「……ありがとう……」
「……あまり話すな。疲れているだろう?」
「……うん……」
感覚を確かめる。命に別状は無い……が、暫くは動けないだろう。
今は、ここで休ませよう……どれだけ時間が掛かっても構わない。
お互いに無言だった。遠くの空を見つめる。心地よい風が吹いている。
歓迎しているのだろう……新たな大精霊を。
「ねぇ、咲耶ちゃん……」
先に口を開いたのは幽羅だった。まだ声は掠れている。
「……何だ?」
「……あたしは……ちゃんと、大精霊として頑張れるかな……?」
僅かに感じる、エアリナの気配。口調の変化は、やはり影響されての事だろう。
だが……気配は、いずれ変わっていくだろう。
今の大精霊は紛れも無く、目の前に居る幽羅なのだ。
「……大丈夫だ、幽羅なら。幽羅は強い……いや、強くなったと言うべきだな。」
「そう、かな……?」
「ああ……」
恐らくは、我と一番長く歩んできた存在。
数々の出来事や、戦いを通じて、幽羅は強くなった。
……心配は、不要だったかもしれないな。
そっと、幽羅の頭を撫でる。
「ん……咲耶ちゃん……」
「……不要か?」
「ううん……ありがとう……」
今はただ……こうして、幽羅の温もりを感じる事が出来る。
それだけで、十分だな……
私は眠れなかった。咲耶様と幽羅様の事が、ずっと心配だった。
窓ガラスが揺れる。風が強い。引継ぎが、上手く行ったのかどうか……
「……帰って、来てくれますよね……?」
昔の事を思い出す。一人ぼっちだった私。
当てもなく放浪していた時に、咲耶様と出合った。
優しい眼をした咲耶様のあの顔は、今でもはっきり覚えている。
それから、少し後……幽羅様にも出会った。
家族みたいな……いえ、もう家族そのもの……
「……あれは……」
ふと、窓の方を見た時……何かが窓の間に挟まっている。
これは……封筒?近くにあったランプに火を灯す。これは……桜木の空間からの……!
急いで開いて、中の手紙を見る。そこには、
『幽羅は無事だ。それと、少々帰るのに時間が掛かる。そちらは二人に任せるぞ。』
とだけ、書かれていた。
幽羅様は無事だった……それが分かっただけで、急に気分が軽くなった。
後は、精霊としての仕事が待っているんでしょう……
「……二人で、頑張りますね……」
手紙を胸に、私はそっと、涙を流した。
空間は大変な騒ぎになっていた。無理もない、突然の引継ぎだったのだ。
だが、どうやらまだ誰も聖域には入っていないようだった。
「おぉっ、咲耶様!」
「幽羅はどうした!誰か、様子を見に行った者はいるか!?」
「い、いえ……まだ誰も……」
その場に居た上位の風の精霊達は、他の処理に追われているようだった。
正規の手順を踏まずに行った……それの影響もあるのだろうか。
「幽羅は我が見る!他の者達は状態の復帰を!」
我の声で風の精霊達が一斉に動き始めた。
我は聖域へと急ぐ。場所は……感覚で分かる。
中央を飛び、森の奥へ。細い道を抜けていく……
「幽羅っ!」
開けた場所。ここが聖域……その中心に、幽羅が倒れていた。
虚ろげに夜空を見つめていた。意識は、あるのか……?
「大丈夫か、幽羅!」
「……さ……くや、ちゃん……?」
意識はあったが、声は掠れている。
幽羅の体を抱えようとした、が……
「お願い……もう少し……ここに、いさせて……」
「幽羅、お前……」
その言葉の重みは、普段の……今までの幽羅とは違う。
間違いなく、これは大精霊としての言葉……
我は幽羅に膝枕をした。このまま寝させるのは心苦しい。
「……ありがとう……」
「……あまり話すな。疲れているだろう?」
「……うん……」
感覚を確かめる。命に別状は無い……が、暫くは動けないだろう。
今は、ここで休ませよう……どれだけ時間が掛かっても構わない。
お互いに無言だった。遠くの空を見つめる。心地よい風が吹いている。
歓迎しているのだろう……新たな大精霊を。
「ねぇ、咲耶ちゃん……」
先に口を開いたのは幽羅だった。まだ声は掠れている。
「……何だ?」
「……あたしは……ちゃんと、大精霊として頑張れるかな……?」
僅かに感じる、エアリナの気配。口調の変化は、やはり影響されての事だろう。
だが……気配は、いずれ変わっていくだろう。
今の大精霊は紛れも無く、目の前に居る幽羅なのだ。
「……大丈夫だ、幽羅なら。幽羅は強い……いや、強くなったと言うべきだな。」
「そう、かな……?」
「ああ……」
恐らくは、我と一番長く歩んできた存在。
数々の出来事や、戦いを通じて、幽羅は強くなった。
……心配は、不要だったかもしれないな。
そっと、幽羅の頭を撫でる。
「ん……咲耶ちゃん……」
「……不要か?」
「ううん……ありがとう……」
今はただ……こうして、幽羅の温もりを感じる事が出来る。
それだけで、十分だな……
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