それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
「はぁ……あたしが、かぁ……」
あんまり、実感が無い。あたしが大精霊なんて……
数日前にはただの一精霊だったのに、一瞬の出来事だった。
先代の大精霊様の記憶を引き継いだ時……何だか、恐ろしい物を見た気がした。
あたしの知らない所で、苦労していたんだなぁ……それで、今度はあたしが、それを……
「気が重いわねぇ……」
この先、どうなる事やら……先代様の記憶は一通り辿った。
あたしがやるべき事も、そこから読み取る事が出来た。
それをどうするかは、あたし次第。さて、どうしたものかしら……
「まぁ、なるようになるかしらね……」
ここまで来たからには、もう戻れない。今のあたしは、ただの精霊ではない。
風の精霊達を統べる大精霊……その意識が必要ね。気合を入れて、頑張りますか。
これから、大精霊としての初仕事、目指すは中央機関。
今日は新しい大精霊として、正式な挨拶をしに行く。
……でも、何を言うか全然思いついてないのよね。本当、どうしようかしら……
暗くて細い道。冷たい向かい風のおかげで、かなり寒い。
あたしは、これから大精霊になろうとしている。今でも信じられない。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……大丈夫です。」
怖かった。聖域……余程の事が無い限りは入る事の出来ない場所。
そこに、足を踏み入れると言う事は……
「心配する必要はありませんよ。これは私も通った道。今、この道には私と貴方しか居ませんから。」
彼は笑顔だった。これから消滅するって言うのに。まるで恐怖を感じてない……
「私も、引継ぎが決まった時は驚きました。そして、私でいいのか?とも思いました。
この道を通った時の事……今でも、しっかり覚えていますよ。」
話しているうちに、何だか寒さが和らいだ気がした。
道も明るくなってくる。これは……月明かり……
何処か、懐かしさを感じる。けれど、あたしは一度も入った事は無い。
「さぁ、もうすぐですよ。」
少し開けてきた。あそこが、聖域……あたしが大精霊になる場所。
魔力の昂りを感じる。そこに、足を踏み入れる。
月明かりに浮かぶ、綺麗な広場。まるで、ここだけが異世界のような……そんな気がした。
「ここに来るのは……私の引継ぎの時以来、ですね……」
「それまで一度も入らなかったんですか?」
「特別な用が無い限りは入りませんよ。まぁ、それが一番なんですけどね。」
風が吹き抜けて行く。心地よい、少しだけ暖かい風。
昂りを静めてくれるような、そんな風だった。
そう、これは……何時か感じた風……
「……生まれた時に、感じた風……」
「ええ……ここに吹く風は、風の精霊が生まれた時に感じる風と同じ。」
暖かい、優しい風……懐かしい、感覚。
もしかして、これって……生まれ変わる、と言う意味なのかも……
「儀式を始める前に……私に、聞きたい事はありますか?」
「あっ……えっと……」
大精霊としての力を引き継げば、彼は消えてしまう。だけど、彼はそれを恐れていない。
消滅してしまうのが、怖くないのかしら……?
「どうして、貴方は……引継ぎに対して、恐怖を感じないのですか?」
「そうですね……私も、完全に怖くないと言えばそれは嘘になります。ですが……」
彼は空を見上げた。とても綺麗な星空だった。
「これが大精霊の役割であり、そして名誉でもある……誇れる事なんです。
それに……私と言う存在が、完全に消えてしまうわけではありませんからね。」
「完全には、消えない……?」
引き継いだ時に消えないって……でも、それじゃあどうして……?
「そうです。貴方も、恐らく聞いた事があるでしょう。精霊は世界から生まれた。
だから、精霊は世界に還る、と。大精霊とて、例外ではありませんよ。」
「あ……」
前に、他の精霊が消えてしまう時に、そんな言葉を耳にした事があった。
文字通り、風になると……そんな意味合いで。
「だから、強い恐怖は感じません。私は、本来居るべき場所に帰るだけなのですから。」
そう言って、微笑みかけてくれた。その顔に恐怖は微塵も感じられなかった。
……ああ、やっぱりこの人は大精霊様なんだ。改めて、痛感した。
「……さぁ、始めましょうか。」
「ま、待って下さい!本当に、あたしで大丈夫なんですか……?」
「ええ……貴方こそが、次の大精霊を受け継ぐに相応しい素質を持っています。
だから、貴方を選んだ。貴方にしか出来ない事があるからこそ、貴方を選んだのです。」
力強い言葉。あたしの不安を打ち消すようだった。
目の前にある、大精霊と言う存在。あたしは……それに、今からなるのだ。
「自信を持って……貴方なら、絶対大丈夫ですよ。」
「……はい!」
ここで引き下がるなんて事は出来ない。あたしは、大精霊になる……
彼の誇りを汚さない為にも……あたしが、ならないといけないんだ。
「あたしが……あたしが、大精霊になります!」
もう、迷わない。これは、あたし自身が決めた道だから。
あんまり、実感が無い。あたしが大精霊なんて……
数日前にはただの一精霊だったのに、一瞬の出来事だった。
先代の大精霊様の記憶を引き継いだ時……何だか、恐ろしい物を見た気がした。
あたしの知らない所で、苦労していたんだなぁ……それで、今度はあたしが、それを……
「気が重いわねぇ……」
この先、どうなる事やら……先代様の記憶は一通り辿った。
あたしがやるべき事も、そこから読み取る事が出来た。
それをどうするかは、あたし次第。さて、どうしたものかしら……
「まぁ、なるようになるかしらね……」
ここまで来たからには、もう戻れない。今のあたしは、ただの精霊ではない。
風の精霊達を統べる大精霊……その意識が必要ね。気合を入れて、頑張りますか。
これから、大精霊としての初仕事、目指すは中央機関。
今日は新しい大精霊として、正式な挨拶をしに行く。
……でも、何を言うか全然思いついてないのよね。本当、どうしようかしら……
暗くて細い道。冷たい向かい風のおかげで、かなり寒い。
あたしは、これから大精霊になろうとしている。今でも信じられない。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……大丈夫です。」
怖かった。聖域……余程の事が無い限りは入る事の出来ない場所。
そこに、足を踏み入れると言う事は……
「心配する必要はありませんよ。これは私も通った道。今、この道には私と貴方しか居ませんから。」
彼は笑顔だった。これから消滅するって言うのに。まるで恐怖を感じてない……
「私も、引継ぎが決まった時は驚きました。そして、私でいいのか?とも思いました。
この道を通った時の事……今でも、しっかり覚えていますよ。」
話しているうちに、何だか寒さが和らいだ気がした。
道も明るくなってくる。これは……月明かり……
何処か、懐かしさを感じる。けれど、あたしは一度も入った事は無い。
「さぁ、もうすぐですよ。」
少し開けてきた。あそこが、聖域……あたしが大精霊になる場所。
魔力の昂りを感じる。そこに、足を踏み入れる。
月明かりに浮かぶ、綺麗な広場。まるで、ここだけが異世界のような……そんな気がした。
「ここに来るのは……私の引継ぎの時以来、ですね……」
「それまで一度も入らなかったんですか?」
「特別な用が無い限りは入りませんよ。まぁ、それが一番なんですけどね。」
風が吹き抜けて行く。心地よい、少しだけ暖かい風。
昂りを静めてくれるような、そんな風だった。
そう、これは……何時か感じた風……
「……生まれた時に、感じた風……」
「ええ……ここに吹く風は、風の精霊が生まれた時に感じる風と同じ。」
暖かい、優しい風……懐かしい、感覚。
もしかして、これって……生まれ変わる、と言う意味なのかも……
「儀式を始める前に……私に、聞きたい事はありますか?」
「あっ……えっと……」
大精霊としての力を引き継げば、彼は消えてしまう。だけど、彼はそれを恐れていない。
消滅してしまうのが、怖くないのかしら……?
「どうして、貴方は……引継ぎに対して、恐怖を感じないのですか?」
「そうですね……私も、完全に怖くないと言えばそれは嘘になります。ですが……」
彼は空を見上げた。とても綺麗な星空だった。
「これが大精霊の役割であり、そして名誉でもある……誇れる事なんです。
それに……私と言う存在が、完全に消えてしまうわけではありませんからね。」
「完全には、消えない……?」
引き継いだ時に消えないって……でも、それじゃあどうして……?
「そうです。貴方も、恐らく聞いた事があるでしょう。精霊は世界から生まれた。
だから、精霊は世界に還る、と。大精霊とて、例外ではありませんよ。」
「あ……」
前に、他の精霊が消えてしまう時に、そんな言葉を耳にした事があった。
文字通り、風になると……そんな意味合いで。
「だから、強い恐怖は感じません。私は、本来居るべき場所に帰るだけなのですから。」
そう言って、微笑みかけてくれた。その顔に恐怖は微塵も感じられなかった。
……ああ、やっぱりこの人は大精霊様なんだ。改めて、痛感した。
「……さぁ、始めましょうか。」
「ま、待って下さい!本当に、あたしで大丈夫なんですか……?」
「ええ……貴方こそが、次の大精霊を受け継ぐに相応しい素質を持っています。
だから、貴方を選んだ。貴方にしか出来ない事があるからこそ、貴方を選んだのです。」
力強い言葉。あたしの不安を打ち消すようだった。
目の前にある、大精霊と言う存在。あたしは……それに、今からなるのだ。
「自信を持って……貴方なら、絶対大丈夫ですよ。」
「……はい!」
ここで引き下がるなんて事は出来ない。あたしは、大精霊になる……
彼の誇りを汚さない為にも……あたしが、ならないといけないんだ。
「あたしが……あたしが、大精霊になります!」
もう、迷わない。これは、あたし自身が決めた道だから。
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