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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「咲耶は……疑問に思った事はない?自分の力について。」
「……ある。おかしいのだ、我の力は。我は桜木の精霊だ。なのに、何故……」
「私にもまだ分からない……けど、もしかしたら、この後の戦いで分かるのかもしれない……」
「……妙な話だ……」

結局、我自身の事は分からぬまま。
この戦いで、一体何が分かると言うのだ……?



また、夢を見た。そして自然と目が覚めた。気配の流れが変わっている。
意識を深層に沈めていても、それを感じる事が出来る。
いよいよ、始まったか……

「咲耶様……」
「天音……ずっと傍に居てくれたのか?」
「はい……その、ずっと咲耶様の事が心配で……」
「そうか……ありがとう。」

天音の心遣いが嬉しかった。
過去に何度も引継ぎの場面を見たり、感じたりして来た我でも、今回ばかりは不安だった。

「……我ならもう大丈夫だ。恐らく、向こうでも感付いてくる頃だろう。」
「準備、致しますか?」
「ああ……そうしよう。」

今回は引継ぎの場面に立ち会う事は出来ない。ここで、終わるのをただ静かに待つだけだ……
我が風の空間に飛ぶのは、終わった後。その為の準備をしなくては……

「幽羅……」

どうか……無事に終わってくれ……



とても冷たい風。幽羅様も、同じ風を感じているのでしょうか……
まるで、雪原に吹く風のように……

「雪乃さん?」
「あっ……羽衣様。」

私はずっと外にいた。幽羅様と咲耶様の事をずっと考えていた。

「ずっと外にいますけど……寒くないですか?」
「……私は、大丈夫ですよ。寒いのには慣れていますから。」
「そうですか……あの、僕は先に寝ますね。」
「はい。おやすみなさいませ……」

……精霊や神々の世界は、人では全てを理解する事が出来ない。
それでも、私は咲耶様や幽羅様、羽衣様と共に暮らす事が出来る……
いえ……精霊だとか、神だとかはもう関係ないのかもしれない。

「大切な、家族……」

私にとって、大切な存在……身近に居てほしい存在……
きっと、咲耶様も同じように思っている……そんな気がする。

「無事に……戻ってきてくださいね……」

私の言葉は暗い夜空の中へ消えて行った。
届かないとは分かっていても……それでも。



信じられないぐらいに力が高まっていくのを感じる。
普段の私なら、耐えられないぐらい……でも、辛くない。
冷たい風。みんなが、ざわついている。

「……んっ……」
『大丈夫?』
「大丈夫です。ちょっと、寒くて……」

ここに来るまでの時みたいに、また寒気がする。
でも、今は……何が起きても、大丈夫な気がする。

『貴方は、ここまで高い魔力を感じた事は無いわよね?』
「はい……」
『でも、こうして無事でいられるなら、きっとこの後も平気ね。
普通であれば、これ程の魔力はあたしでも上手く扱えるか微妙なのよ。』

何となく、嬉しそうな感じがする。こうして引継ぎ出来る事が、嬉しいのかな。
でも……エアリナ様はこの後消えてしまう。

『……魔力が十分に高まったら、引継ぎ用の空間を展開するわ。
 その時肉体との関連性は切り離されるわよ。衝撃が来ると思うから、気をつけてね。』
「わかりました……頑張ります。」
『ふふっ。気合は十分ね。それじゃあ、始める前に……あたしに聞いておきたい事はあるかしら?』
「聞いておきたい事……」

間違いなく、何かを聞く事が出来るのはこれが最後。
少し……気になった事を聞いてみよう。

「それじゃあ……咲耶ちゃんとは、どういう……?」
『咲耶とは……まぁ、長い付き合いというか……色々とお互いに支えあった仲かしら。』
「そうだったんですか……」
『貴方も知っていると思うけど……咲耶は、色々な物を背負っている。少しでも力になりたかったのよ。』

背負っている物……そう、咲耶ちゃんは、あの戦いで……
今でも、たまに凄く辛そうな時がある……

『……これからは、貴方が咲耶の力になる番。同じ大精霊として……親しい友人として。
 あたしの記憶も引き継ぐだろうから、それで……分かると思うわ。辛いかもしれないけれど……』
「大丈夫です。私は……ずっと、咲耶ちゃんの傍にいました。だから……」

もっと、咲耶ちゃんの力になりたい。少しでも多くの事を手伝いたい。
私はもう、子供じゃないんだ……

「なります。私が、大精霊に!」
『ええ。貴方なら、必ず上手く行くわ。それじゃあ、始めましょう。』
「はいっ!」

今度は、私が咲耶ちゃんの力になる番。
エアリナ様がしたように、私も。
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