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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「あ、咲耶ちゃん、おかえり~!」
「……ただいま。」

館に帰ると、幽羅が笑顔で出迎えてくれた。

「大丈夫だった?」
「ああ、問題ない。」
「そっか。咲耶ちゃん、最近ちょっと調子悪そうだったからさ……」
「……すまないな。だが、大丈夫だ。」

やはり見抜かれていたか。
そう、確かに調子は万全ではなかった。
まぁ……この程度では影響はない。

「あ、もうご飯出来てるからね!」
「ああ、わかった。」

とりあえず、今回の件に関してはもう大丈夫だ。
……しかし、場所がかなり町に近い距離だったな。
この調子では、いずれ……



「……はぁ……」
「どうした?溜め息とはらしくないぞ。」

それは食事の後の事だった。
珍しく幽羅が溜め息をついていた。
普段から元気なだけに、こういう場面は非常に少ない。

「あのね……最近、ちょっと体が重くて……」
「大丈夫か?やはり、あの時に術を使ったのがまずかったか?」

幽羅はその身体に似合わず、強力な魔法を扱う事が出来る。
が、当然ながら負担もある。使いすぎれば影響も出る。

「う~ん……どうなんだろう……」
「我の心配をするのはいいが、自分の事を疎かにするな?」
「うん……」

よっぽど疲れているのだろうか……
だが、幽羅が席を立った瞬間、別の気配が襲った。

「……エアリナ……?」

その気配は紛れもなくエアリナの物だった。
今まで、幽羅が目覚めている時にエアリナの気配を感じる事は無かった。
だが……急に何があったのだ?もしや……



「急にごめんなさいね……」
「……近いのだろう?」
「ええ……」

星の見えるテラス、そこに我らはいた。
エアリナから感じられる気配は、以前より弱くなっている。

「一度、この子を元の姿に戻さないとね。」
「……後どれくらい持つか?」
「どうかしら……わからないわ。ただ安定してない事は確か。」
「そうか……手遅れにならなければいいのだが。」
「変な事言わないでよ。怖くなっちゃうじゃない……」

その言葉は明らかに弱気。らしくないな……
だが無理もない。残された時間が少ないのだから。

「すまない……だがどうする?」
「どうしようもないわよ。とにかく、一度この子に話をしないと……」

果たして、今の幽羅に引継ぎに耐えうる能力を持っているだろうか?
互いが破滅する……その可能性もある。
そうなれば、世界の秩序も乱れるであろう……

「頼むぞ、エアリナ。我は仲間を失いたくない。」
「わかっているわ。絶対に、無事に引き継がせる。」

迷いのない言葉だった。
それは彼女自身もわかっているからこそだろう。
二人で夜空を見上げる。風は随分と涼しくなった。

「もう、夏の暑さも通り過ぎたな。」
「そうね……もっと長く感じていられたらなぁ……」
「……また、感じられるさ。この風を……」
「……ええ……」

何も考えず、ただただ、この美しい夜空を眺めていた。
季節はもう、秋へと向かっていた。
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