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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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扉の開く音に気づき、我は玄関へと走った。
そこに立っていたのは、雨で服の色が変わっていた幽羅と雪乃だった。

「二人とも……無事だったか、良かった……」
「えへへ……ただいま。」

笑顔を見せる幽羅。だが、体は少し震えていた。

「ただいま戻りました。ご心配掛けて申し訳ありません……」
「いや、いいんだ……」

雪乃は大丈夫そうだが……外から冷たい風が吹いている。今日は寒かっただろう……

「あっ、おかえりなさい……って、びしょ濡れじゃないですか!?」

羽衣も驚いている。この大雨の中で戦ったんだ……負担も相当だろう。

「中に入って暖を取らなければ……羽衣、頼めるか?」
「はい!雪乃さん、幽羅さん、こっちに……」

二人を誘導する羽衣、我はそれを眺めていた。
……相当深く眠っていたか。以前にもあったが、よりによってこんな時に……



雪乃と幽羅は寝巻に着替え、全員がリビングに集まる。
今回現れた魔物……そして戦いを聞く。

「人格を持っていなかった、か。」
「うん……ただ叫んでるだけだったし、頭がいいような感じじゃなかったよ。」

人格を持っていない……今までにない相手だ。
今までの戦いで、あの黒い魔物は必ず人格を持っていた。
だが……それが無い。我々が討つ黒い魔物とは、また別なのだろうか……?

「でも、気配は今までと同じような感覚がしましたし、消え方も同じでしたし……」
「……何らかの理由で人格を失ったか、それ以外か……」

気配や性質は同じ……やはり、同一種か。一体、根源は何処にある……?
誰がこのような事をしている……?

「でも凄いですね、二人で倒しちゃうなんて……僕は雨の日は苦手ですし。」
「そんな事は……今回の戦いは、幽羅様が主導でしたし……」
「あ……あはは、あたし一人が出すぎちゃったかなぁって気もするけど……」

実の所、幽羅はさほど空中戦をした事が無かった。能力的な限界もあったが……
それを率先して行うあたり、力の扱いにも慣れて来たか。
……良い事だ、きっとエアリナも喜んでいるだろう。

「何、それも戦い方の一つだ、悪いわけじゃないさ。」
「そうかなぁ……」

まだ、完全では無いが……すぐに適応するだろう。
空での戦い……我には出来ぬ事だ。

「さて、今日は疲れただろう?早めに休んだ方がいい。」
「そう、ですね……それでは、お先に失礼します。」

雪乃が席を離れる。だが、幽羅は何やら考えていた。

「幽羅さん、どうしたんですか?」
「あ、ううん、何でも無いよ。それじゃ、あたしも先に休むね。」
「ああ、ゆっくり休んでおくんだ。」

幽羅も席を離れる。今日は二人とも疲れているだろう……
明日からは、我もしっかり動かなくてはな。

「はぁ……今日が雨じゃなかったら僕も動けたのになぁ……」
「雨は苦手か?」
「一応大丈夫ですけど、炎の効果が弱くなりますし……」

羽衣は炎魔法が得意だが、流石に天候がこれでは威力も弱まってしまうだろう。
あの炎の翼も……この状況ではな。

「……仕方ないとは言え、難儀だな……」
「そうですね……はぁ……」

外はまだ雨が振り続いている。今日の所は、止みそうも無いだろう……



「む……幽羅か。どうした?」
「咲耶ちゃん……ごめんね、こんな時に。」

部屋で休んでいた時、幽羅が部屋に来た。
表情は暗い。やはり何か、考えていたか……

「今日は……勝手に行ってごめん。ちゃんと、伝えておけばよかったよ……」
「何だ……その事は気にしなくていいさ。」
「でも、こう言う事は何時も咲耶ちゃんと行ってたから……」

自信は……無かったんだろうな。無理も無いが……

「幽羅はもう大精霊なんだ、我に頼る事も無いだろう?それに、幽羅が動いてくれれば我も楽になる。」
「咲耶ちゃん……」

幽羅は十分な力を持っている。世界に影響する程の力だ。
一人でも十分に戦っていけるだろう。

「別に、無理をして戦う必要も無いし、我とて好きで戦っている訳ではないのだぞ?」
「……そう、だよね……」
「幽羅……心配なのは分かるが、な。自分が大精霊である事を忘れるな?」

……これもまた、大精霊として生きる者の苦悩だ。
大きすぎる力……その扱い。幽羅にとって、それが相当の負担になるだろう。
……こればかりは、我にはどうする事も出来ない。

「……分かった。ごめんね、咲耶ちゃん。」
「……ああ。」

部屋を出る幽羅。少し、寂しそうだった。
……我の戦う姿を見すぎていたんだろう……無理に戦って欲しくは無いのだが……
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