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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「……雨、かぁ。」

今日は酷い雨。憂鬱な気分……でも、風は出てる。
灰色の空は……あんまり、好きじゃない。
何だか、悪い事が起こりそうな……そんな気がする。

「幽羅様、少しよろしいでしょうか?」

扉の外から雪乃ちゃんの声がした。何かあったのかな……?

「ん……大丈夫だよ。」
「失礼します……あの、依頼のお手伝いをしてもらいたいのですが……」
「あ、来たんだ。今日は無いと思ってたよ~。」

咲耶ちゃんが朝に依頼を確認した時、珍しく依頼が無いって言ってた。
もしかしたら、大雨で手紙が届くのが遅くなったのかも。

「咲耶ちゃんと羽衣ちゃんは?」
「咲耶様も羽衣様も、まだ寝ていますので……」
「そっか……」

二人とも、調子が悪いのかな……?あたしもそんなに調子はよくないけど。

「それで、どんな依頼なの?」
「それが……ジャングル地帯に見た事もない黒い魔物が現れた、と……」
「えっ……?」

黒い魔物……あたし達が倒さないといけない相手。
……もしかしたら、まだそこに残っているかもしれない。

「私達だけでは厳しいかもしれませんし、ここは咲耶様と羽衣様も一緒に行った方が安全かと……」
「……そう、かな……」

……咲耶ちゃんは、前に一人で倒した事もあった。
戦い方も力も違うけど……今のあたしなら、出来る気がする。
でも……本当に大丈夫かな……?みんなで戦わないと危ないかもしれない……

「どうしましょう……?」
「その魔物ってどんな感じのか、分かる?」
「確か、大きな翼を持って、空を飛んでいたと……」

空を……そうなったら、咲耶ちゃんの大体の攻撃は届かなくなる。
羽衣ちゃんは空を飛べるけど……今日は雨、あの飛び方が出来るか分からない。
すぐに戦いに行けるのは、あたしと雪乃ちゃんだけ……

「大丈夫、二人で行こう。あたし達だけで、何とかなると思う。」
「……分かりました。では、準備をしてきますね。」
「うん……」

ちょっと不安だけど……でも、ずっと咲耶ちゃんに頼ってられない。
……何時も、咲耶ちゃんが戦いの真ん中にいた。
だから、今度はあたしが……前に出て戦う。あたしだって……もっと、戦える。



「雪乃ちゃん、このあたりかな?」
「そう書かれていましたね……恐らく、ここの何処かにいると思います。」

相変わらずの大雨……その中で、あの魔物を探す。
きっと、まだ獲物を探してここにいる……そんな気がする。
……少し怖いけど、今ここにいるのはあたし達だけ。

「……何処かに、いるはず……」
「この雨だと、音で判断するのは難しそうですね……」

雨音が大きくて、小さい音は掻き消される。何処からそれが襲ってくるか分からない。
ただでさえ見通しの悪いジャングルで、見えない敵を探す。
……咲耶ちゃんなら、気配ですぐ見つける事が出来るのかな……?

「……風……?」

ふと、突然風が吹いた。追い風……後ろ……?
あたしの中で、何かが閃いた。

「……そこっ!」
「えっ!?」

雪乃ちゃんが驚く横で、振り向き様に出の早い魔法を飛ばす。
見えた、あの真っ黒な影……間違いない!

「キエェェェェェェッ!!」
「きゃぁっ!?」

魔法が当たって叫び声を上げるあいつ。真っ黒な体、その背中に蝙蝠の羽みたいなのがあった。
……咲耶ちゃんより大きい、この体で空を飛ぶの……?

「くっ……素早い!」

雪乃ちゃんの弓を軽々かわして、急に高く飛んだ。
一瞬であんな高さに……見た目より相当速い。

「うわっ、あんなに……!?」
「それなら……!」

雪乃ちゃんの矢が青く光る。そして、冷気を纏った矢を撃った。
あいつの下……外れたかと思うと、矢が魔物の方に向いた。
熱を追いかける矢……確かそんな事を言ってたかな……
でもそれに気づかれたのか、あいつは矢を木に引っ掛けて更に高く飛んでいった。

「これでは届かない……」
「……こうなったら……!」

あたしは高く飛んだ。早くあいつに追いついて……空で倒してやる!

「ゆ、幽羅様っ!」
「ごめんっ、広い所に行かせるからっ!」

あたしが囮になるのもあり……うん、何とかなる……!

「このっ、逃げるなっ!!」
「キキキッ!」

近付こうとするとすぐに逃げようとする。
何とか雪乃ちゃんがこいつを見失わないようにしなきゃ……!

「……あっ、あそこなら……!」

一瞬、雪乃ちゃんが見えた。少し先の開けた場所に走ってる。

「よしっ、これでどうだっ!」

あいつに向かってもう一度、風魔法を撃つ。
避けられた……けど、今度はあいつからこっちに向かってきた。

「ほらほら!あたしはこっちだよ!」
「キィェェェェェッ!!」

叫び声が耳に刺さる……でももう少し……よし、ここなら!

「てやぁぁぁぁぁっ!!」
「グェッ!?」

突っ込んでくる所に合わせて、お腹に思いっきり蹴りを入れた。
ふらふらと落ちていくあいつの下から青白く光った矢が飛んでくる。
矢があいつの翼に刺さると、一瞬で氷付けになった。

「たぁっ!」

落ちる氷の塊を蹴り上げて、一旦持ち上げる。最後は……

「これで……はぁっ!!」

風を纏った蹴りで、塊を地面に向かって蹴り飛ばした。
……ちょっと痛い……けど、もの凄い勢いで落ちていく。
そして……地面に落ちて、バラバラに砕け散った。

「……これで……いいんだよね……?」

灰色の空を見る。雨は振りやむ気配も無い。
……あたしは……ううん、あんまり考えないほうがいい、かな。
ゆっくりと地面に降りる。

「幽羅様!大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ。ちょっと疲れちゃったけど……」

久しぶりに、空で思いっきり動いたから、少し疲れた。
……晴れてれば、もう少しマシだったかも。
砕け散った氷が溶けて、バラバラになったあいつの体の一部が足元に転がっていた。

「……気持ち悪い奴。」
「……あまり、見たくはありませんね……」

暫くして、白い煙を吹きながら消えた。結局……何物かは分からなかった。
でも、何とか終わったし、早く帰って……む、鼻が……

「は……くしゅんっ!……うぅ、早く帰ろう……」
「あら……ふふっ、そうですね。」

……二人ともどうしようもないぐらいずぶ濡れ。
風邪引く前に、帰らなくちゃ……
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