それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
桜木の湖……そこで多数の猛犬と相手をしていた。
度々起こる異常繁殖、原因は分からない。
「てやぁっ!!」
「幽羅、後ろだ!」
「むっ、させないよっ!」
幽羅の動きは以前とは異なっていた。圧倒的な速度と魔法連携……
背後に敵が居ても、瞬時に対応している。我以上の早さだ。
戻って早々の討伐依頼だと言うのに、その力が鈍っている事は無かった。
いや……確実に良くなっている。力に対する順応が早いのか。
「あっ、逃げるなっ!ええいっ!」
逃げようとする猛犬を魔法で追撃する。風魔法の威力、精度も上がっている。
本来であれば時間を掛けて開放するものだ。それを一気に使っている……
「これが最後だな……そこっ!」
最後の一匹に止めを刺し、あたりは落ち着いた。
「ふぅ……結構多かったね~。」
額に汗を浮かべている幽羅。だが、見た様子ではまだ余裕があるようだった。
「……ふむ。」
「咲耶ちゃん、どうしたの?あたしの顔に何かついてる?」
「いや、そうではないのだがな……体は大丈夫か?」
正直、飛ばしすぎていた感はあった。何しろ、たまに我ですら追いつけない速さで動いていたのだ。
当然負担もあるだろうと思うのだが……
「うん、平気だよ。やっぱり、大精霊の力って凄いんだね……前と全然違う感じがするよ。」
「違和感は無いのか?」
「うーん、違和感かぁ……そう言うのは無いと思う。」
「そうか……」
力に元々適合していたのか、あるいは別の要因か……
どちらにせよ、体への負担はそう大きくはなさそうだ。
どうやら、我が心配する程の事ではない様だな。
「ふふっ……」
「む、急に笑って……やっぱり何かついてるんでしょ~?」
そう言った幽羅の口調は、何処かエアリナに似ていて。
「……エアリナの記憶を引き継いでいるのだ……やはり、似るか……」
「えっ……?」
当たり前の事だ。引き継いだ者がその影響を受けるのは。
……我も先代の記憶をある程度引き継ぎ、その影響を受けている。
ただ、我の場合はその度合いが薄い。我と言う存在が強かったんだろう。
幽羅は……まだ、判断は難しいか。もう少し時間が必要だ。
「さて……では、帰るか。」
「うん!」
深く考える必要は無いか……幽羅なら、大丈夫だろう。
「……ふぅ……」
読んでいた本を閉じ、ため息を一つ。
状況は余り変わっていない。あの黒い魔物が現れたと言う報告は無い。
……恐らくは、あれが根源となっているだろうとは思うが、しかし……
そもそもあれはこの世界に存在するものでは無かったはずだ。
「また考え事かしら?咲耶。」
扉の開く音と、幽羅の声。だが、その雰囲気はエアリナの物にとても近かった。
「幽羅か……」
「えへへ、似てるかな?」
「ああ……よく似ているよ。」
……驚いたな。これだけの影響を受けていながら、根本までは書き変わっていない。
過去の事例で、影響を大きく受けすぎた結果、転生に近い引継ぎになった事があった精霊がいた。
幽羅もそれに近い状況のようだが……
「エアリナ様の記憶……ちゃんと辿ったから。咲耶ちゃんとの事も分かるよ。」
「……当然だな。」
記憶を引き継いでいるのだ、今までの我とエアリナの関係も把握しているだろう。
……肉体を失っている時の事もだ。
「咲耶ちゃん、凄く可愛くてびっくりしちゃったよ。」
「ふっ……それは何時の事を言っているんだ?」
隣の椅子に座り、ふふっ、と幽羅が笑う。そんな時も、我にはあった。
恐らくは……我がまだ大精霊になって間もない頃だろう。
あの時の我は……まだ若かった。見た目としては余り変わらないであろうが……
「……変わってるんだね、あたしも、咲耶ちゃんも。」
「……そうだな……」
当時の事を少し思い出す。大精霊になった当時は、本当に右も左も分からない状態だった。
……先代の記憶と、それまでの我の記憶が混ざり合っていた、混沌とした記憶。
それを整理するのに時間が掛かった覚えがある。
「……咲耶ちゃん、ずっと一人で戦ってたんだね。」
「己の問題に他を巻き込みたくは無かった、それだけだ。」
「……本当に、それだけかな……?」
我の目を見る幽羅……その目は何処か寂しげで。
「……深くは聞かないでくれ。」
「うん……でも、無理しちゃダメだよ?」
「分かっているさ……」
……共に戦う仲間がいる。昔の我なら、考えられない事でもあった。
たった一人で戦い続けていた、あの時とは違う。
「……頼りにしているぞ、幽羅。」
「あたしだけじゃないよ。雪乃ちゃんと、羽衣ちゃんも、傍にいるんだから。」
「ああ……」
……考えすぎ、か。エアリナの言う通りだな……
今はそう、目的を果たす、それを一番に考えるべきだ……
度々起こる異常繁殖、原因は分からない。
「てやぁっ!!」
「幽羅、後ろだ!」
「むっ、させないよっ!」
幽羅の動きは以前とは異なっていた。圧倒的な速度と魔法連携……
背後に敵が居ても、瞬時に対応している。我以上の早さだ。
戻って早々の討伐依頼だと言うのに、その力が鈍っている事は無かった。
いや……確実に良くなっている。力に対する順応が早いのか。
「あっ、逃げるなっ!ええいっ!」
逃げようとする猛犬を魔法で追撃する。風魔法の威力、精度も上がっている。
本来であれば時間を掛けて開放するものだ。それを一気に使っている……
「これが最後だな……そこっ!」
最後の一匹に止めを刺し、あたりは落ち着いた。
「ふぅ……結構多かったね~。」
額に汗を浮かべている幽羅。だが、見た様子ではまだ余裕があるようだった。
「……ふむ。」
「咲耶ちゃん、どうしたの?あたしの顔に何かついてる?」
「いや、そうではないのだがな……体は大丈夫か?」
正直、飛ばしすぎていた感はあった。何しろ、たまに我ですら追いつけない速さで動いていたのだ。
当然負担もあるだろうと思うのだが……
「うん、平気だよ。やっぱり、大精霊の力って凄いんだね……前と全然違う感じがするよ。」
「違和感は無いのか?」
「うーん、違和感かぁ……そう言うのは無いと思う。」
「そうか……」
力に元々適合していたのか、あるいは別の要因か……
どちらにせよ、体への負担はそう大きくはなさそうだ。
どうやら、我が心配する程の事ではない様だな。
「ふふっ……」
「む、急に笑って……やっぱり何かついてるんでしょ~?」
そう言った幽羅の口調は、何処かエアリナに似ていて。
「……エアリナの記憶を引き継いでいるのだ……やはり、似るか……」
「えっ……?」
当たり前の事だ。引き継いだ者がその影響を受けるのは。
……我も先代の記憶をある程度引き継ぎ、その影響を受けている。
ただ、我の場合はその度合いが薄い。我と言う存在が強かったんだろう。
幽羅は……まだ、判断は難しいか。もう少し時間が必要だ。
「さて……では、帰るか。」
「うん!」
深く考える必要は無いか……幽羅なら、大丈夫だろう。
「……ふぅ……」
読んでいた本を閉じ、ため息を一つ。
状況は余り変わっていない。あの黒い魔物が現れたと言う報告は無い。
……恐らくは、あれが根源となっているだろうとは思うが、しかし……
そもそもあれはこの世界に存在するものでは無かったはずだ。
「また考え事かしら?咲耶。」
扉の開く音と、幽羅の声。だが、その雰囲気はエアリナの物にとても近かった。
「幽羅か……」
「えへへ、似てるかな?」
「ああ……よく似ているよ。」
……驚いたな。これだけの影響を受けていながら、根本までは書き変わっていない。
過去の事例で、影響を大きく受けすぎた結果、転生に近い引継ぎになった事があった精霊がいた。
幽羅もそれに近い状況のようだが……
「エアリナ様の記憶……ちゃんと辿ったから。咲耶ちゃんとの事も分かるよ。」
「……当然だな。」
記憶を引き継いでいるのだ、今までの我とエアリナの関係も把握しているだろう。
……肉体を失っている時の事もだ。
「咲耶ちゃん、凄く可愛くてびっくりしちゃったよ。」
「ふっ……それは何時の事を言っているんだ?」
隣の椅子に座り、ふふっ、と幽羅が笑う。そんな時も、我にはあった。
恐らくは……我がまだ大精霊になって間もない頃だろう。
あの時の我は……まだ若かった。見た目としては余り変わらないであろうが……
「……変わってるんだね、あたしも、咲耶ちゃんも。」
「……そうだな……」
当時の事を少し思い出す。大精霊になった当時は、本当に右も左も分からない状態だった。
……先代の記憶と、それまでの我の記憶が混ざり合っていた、混沌とした記憶。
それを整理するのに時間が掛かった覚えがある。
「……咲耶ちゃん、ずっと一人で戦ってたんだね。」
「己の問題に他を巻き込みたくは無かった、それだけだ。」
「……本当に、それだけかな……?」
我の目を見る幽羅……その目は何処か寂しげで。
「……深くは聞かないでくれ。」
「うん……でも、無理しちゃダメだよ?」
「分かっているさ……」
……共に戦う仲間がいる。昔の我なら、考えられない事でもあった。
たった一人で戦い続けていた、あの時とは違う。
「……頼りにしているぞ、幽羅。」
「あたしだけじゃないよ。雪乃ちゃんと、羽衣ちゃんも、傍にいるんだから。」
「ああ……」
……考えすぎ、か。エアリナの言う通りだな……
今はそう、目的を果たす、それを一番に考えるべきだ……
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