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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「はぁ……はぁ……さ、流石に、疲れた……」
「……この数は、予想外でした……くっ……」
「雪乃さん!?」

足の力が抜けて、思わずその場に跪いてしまった。
……龍京近くの赤いさとうきび畑。ここでブラックビートルが大量に現れたと言う依頼。
普通では有り得ないほどの数……それを、たった二人で、数を減らして……

「雪乃さん、大丈夫ですか……?」
「大丈夫です……戻りましょう、羽衣様。これだけ倒せば、大丈夫かと……」

何とか持ち直して、立ち上がる。目の前に広がっているのは、畑と多くの死体。
……こんな数は、本当に初めて……どうしてこんなに……?

「……後々、原因を突き止めなければなりませんね。」
「……そうですね。もしも、これが何度も続くなら……」

……私達の役目は、まずここまで。この先、再びこのような事が起こるなら……
必ず、何処かに原因があるはず。けれど、今の私達に、それを探る力は残っていない。
無理をしてはいけない……私達が今倒れてしまっては……



「……咲耶様……」

一人、ベッドで横になる。
当ての無い私を、保護してくれた……私の、恩人。
人ではないと気づいた時、少し驚いたけれども……素直に受け入れる事が出来た。
私も、ある意味では人ではない……人であって人でない、中間に居る存在。
……咲耶様は、最初から気づいていたのかもしれない。

「私は……力になれますか……?」

咲耶様はとても強い力を持っている。そして、その扱い方も知っている。
……それに比べれば、私は……

「ん……んっ……」

急に鼓動が早くなる。最近、夜冷え込んできている。
冬が近づくにつれ、時々こうして胸が昂る。それは、私に雪女としての血が流れている証。
……一線を越えれば、私は……

「咲耶……様……」

今はここに居ない、この館の主。
……もう、失いたくない……同じ事を、繰り返したくない……



扉の開く音と、拍手の音で思考の中から引き戻される。
そして幽羅が入ってくるのが見えた。どうやら無事に終わったようだな。

「お疲れ様。どうだったか?」
「ほぁ~……死ぬかと思った……」
「全く、大げさだな……その帽子は?」

幽羅は緑色の大きな帽子をしていた。魔法使いがするような大きい帽子だ。
橙色のリボンも付いている。

「あ、これね。お祝いの品だって言って神王様から貰ったの。」
「ほほう……」

意識を帽子に向けると、魔力が感じられた。どうやら能力付加をさせているようだ。

「うむ、中々似合っているな。」
「えへへ……ありがとう、咲耶ちゃん。」

幽羅は少し照れていた。と、その後ろでアルフォードが入ってくるのが見えた。

「お疲れ様、幽羅ちゃん。」
「あ、お疲れ様でした!」

アルフォードの礼服姿……これも妙に似合っているのが不思議だが……
まぁともかく、これで全て終わったわけではない。

「さて……次は魔王殿の所か。話は行っているか?」
「勿論。でも、咲耶も行くの?」
「ん……そうだな……」

本来ならば、我はここに来る必要は無かったのだが……さて、どうしたものか。
このまま魔界の様子を見に行くのも一つだが……

「あっ、咲耶ちゃん……魔界には、あたし一人だけで行ってもいいかな?」
「ん?どうしてだ?」
「あたし……もっと一人で頑張ってみたい。咲耶ちゃんが居ると心強いけど……
 それだけじゃダメだと思うから……いいかな?」

……やはり、成長したな……ここまで意識が持てれば十分だ。

「……分かった。一人で行くといい。」
「ありがとう……咲耶ちゃん。」

微笑む幽羅。その微笑みは、何処かエアリナに似ていた気がした。

「それじゃあ、幽羅ちゃんは私が案内するよ。咲耶はどうする?」
「我は神界に残る。お前の部屋で待たせてもらおうか。」
「……私が戻ってきたら即出発だね。分かった。」

留まる必要は無い……今の我には、まだやるべき事がある。
それに、あまり人を待たせるものではない。

「幽羅ちゃんも、終わったらすぐに向かう?」
「はいっ!」
「よし、それじゃあ早速……咲耶、また後でね。」
「ああ、待っているぞ。」

アルフォードが魔界への門を開け、そしてそのまま中へ消えた。
我はそれを見届け、アルフォードの部屋へ向かった。
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