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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「もう大丈夫か?」
「うん。ごめんね、心配させちゃって……」
「何、幽羅が無事ならそれで構わんさ。」

暫く横になったおかげで、幽羅の状態はある程度回復した。
聖域を出て、細い道を二人で歩く。
……少し先が騒がしいな。我らが戻るのを待っているんだろうか?

「みんな待ってるかな?」
「ああ、そうだろうな。恥ずかしがらずに、堂々としているといい。」
「う、うん。わかった。」

少し自身がなさそうだった。やはり緊張しているのだろう。
大精霊として、皆の前に立つと言う事の重さ……それは、我も知っている。
声が大きくなってくる。やはり、待っているな。

「さぁ、もうすぐだぞ。」

そう言いながら軽く肩を叩く。
緊張しているのか、歩き方がぎこちない。

「あたしが……うん。あたしが大精霊……」
「……ふふっ。」

何となく、自分が大精霊になった時の事を思い出した。
その当時の我も、大精霊の重圧で酷く緊張していた。
すぐに慣れたが……その時と同じだな、今の幽羅は。

「む、笑わないでよ~。」
「いや、な。昔の我を思い出したんだよ。」
「えっ?」
「我とて最初はその重圧が恐ろしかった物だよ……さぁ、もうすぐだぞ。」

道が開けてきた。既に多くの精霊達が集まって、帰りを待っているようだった。
そしてこちらに気づいた時、声がピタリと止んだ。

「幽羅。」
「うん……」

幽羅が前に出る。視線が集中しているのが分かる。
我は幽羅の背中を見ていた。

「……新しく風の大精霊になった神樹幽羅です。
 この度は突然の引継ぎで皆さんを驚かせてしまってごめんなさい……
 でも、こうするしか方法がなかったんです。」

幽羅の声が響く。意思を持った声だ。何処かエアリナが持っていた雰囲気を纏っている。

「皆さんは……もう気づいていらっしゃると思います。エアリナ様の身体の事を……
 精霊としての身体を失ったエアリナ様は、その意思だけをあたしの身体に宿らせていたのです。」

幽羅の口から、淡々と語られる真実。凛とした声。

「エアリナ様は、最後の希望をあたしに託してくれました。風の大精霊として、あたしに……」

そこで言葉が詰まった。我は声を掛けず、ただじっと見守っていた。

「……まだ、大精霊として学ばなければならない事も多いと思います。
 ですが、エアリナ様が託したこの思いを心に、これから頑張って行きますので……
 皆さん、よろしくお願いします!」

……決して話が上手いわけではない。だが、これで十分だろう。
幽羅は最後に一礼をして、前を見据えていた。

「……行くか、幽羅。」
「うん……」

再び歩みだす。大精霊として、最初の勤め。それが待っている。



「ここが、風の大精霊の部屋……」
「我も何度か入った事があるが……これは……」

大精霊と、大精霊が認めた者のみが入る事の出来る部屋が、それぞれの世界に必ず存在する。
そしてここが、大精霊が身を休め、様々な事を行う場所である。

「……で、最初は部屋のお掃除?」
「掃除……と言うか、整理だな。まぁ、さほど時間は掛からんだろうが……手伝うか?」
「うん。ちょっと自分だけだと自信が無いと言うか……」

幽羅が言うのも分かる。少々、部屋の状態が荒れていた。
……エアリナ、そんなに整理が苦手だったか?

「……結構、面倒くさがりだったんだ、エアリナ様……」

……まぁ、そう言う事なんだろうな……
記憶がある分、幽羅の場合は尚更だろう……
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