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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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夜。寝間着に着替え、ベッドの上で本を読んでいた時。
ふと、扉を叩く音が聞こえた。

「……幽羅か?いいぞ。」

気配で誰かは判る。
普段の幽羅なら、この時間帯にはもう寝ているはずだったが……

「……ごめんね、こんな時間に。」
「珍しいな、どうした?」
「うん、他の子たちに、今日咲耶ちゃんが相手した奴の事、聞いたんだ。」
「……そうか。」

……幽羅も気にしていたのか。余り関わって欲しくは無いのだが……

「どうしても気になってるんだ。ある子が、あの時の奴と同じだって……」
「幽羅。」

途中で言葉を止めさせた。
……あの時の記憶は、我とて思い出したくないのだ。
半ば記憶を封じている程……もう繰り返してはならないのに……

「……これ以上言うな。それに、神王殿はそれを察して我をここに送り込んだのだろう。」
「そうだろうけど……咲耶ちゃん、大丈夫なの?」
「我がこの程度で倒れるとでも思っているのか?」
「ううん、そうじゃないよ。だけど、心配なんだよ……」

普段あまり見せる事の無い、幽羅の辛そうな表情。
……かなり、心配しているのだな。

「……幽羅、お前が気にする事ではない。我に任せておけ。」
「……うん。」

幽羅はまだ若い。そして、知識でしかあの時の事を知らない。
……幽羅には、あのような思いはさせたくない……

「お前らしくないぞ、幽羅。何時ものお前は何処へ行った?」
「……ごめんね。でも、やっぱり不安なんだ。」
「……我も同じだ。だが、何れ確実になった時には神王殿も動いてくれる。今はまだ大丈夫だ。」
「うん、そうだよね……ありがとう。ちょっと楽になった。」

幽羅に笑顔が戻る。幽羅に辛い表情は似合わない。

「ふふっ、それならいいが。しかしそうだな……明日は一日何もない。久々に出かけるか?」
「え?ほんとに?」
「ああ。のんびりするのも悪くなかろう。」
「やったぁ~!えへへ……」

やはり幽羅はこうでなくては。
何時も明るい、彼女らしい、ある意味では見習わなくてはならない部分。
時々度が過ぎる事もあるが……まぁ、それはそれでよしとしよう。

「今日はもう遅い。早く寝ておけ?」
「うん、わかった。それじゃあおやすみ、咲耶ちゃん。」
「おやすみ。」

静かに部屋を出る幽羅。
その小さな背を見送り、部屋の明かりを消した。
……今はまだ、この件に対して深く考える必要はないだろう。
……もう寝よう。明日は久しぶりの休暇だ。
三人で久しぶりに出かける。こういうのも、悪くない。
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