忍者ブログ
それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
<< 2024 / 11 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
[44] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「……酷いものだな。」
「そうねぇ……」

大部屋は荒れに荒れていた。
占領されていたせいもあったが、何よりあの魔法の影響が大きいだろう。

「まぁ、ここの部屋って元々使ってなかったから酷かったんだけど。」
「それを狙われたか?」
「かもしれないわね~……」

今は何も気配がしない。残り香すらない。

「……ここを選んだのは、やはりエリアスに近いからか……」
「そうかもしれないわ……私、あいつらが何か話してたの、盗み聞きした事があるんだけど……」
「何を言っていた?」
「んーと……エリアスを葬れば世界は混乱するとか何とか……」
「……本格的に狙っていたようだな。」

やはり、エリアスを崩すつもりだったのか……
あの魔物が居た場所は、血の一滴も残されていない。
残骸はおろか、気配すら消し飛ばす程の魔法……
エアリナは焦っている。引継ぎがもし、遅れれば……
その影響は確実に、全ての世界に影響する。

「それにしても、あの子がやったの?これ。」
「……一応、な。」
「ふ~ん……ま、こっちとしては厄介事が無くなって助かったけど……あ、そうそう。」
「何だ?」

我が戻ろうとした時、呼び止められた。

「後であの子に服、渡しておいてくれる?頑張ったご褒美、なんてね。」
「……わかった。」

約束していた通り、服を受け取った。
これで、少しは気分がよくなってくれればいいが……



「幽羅、もう大丈夫なのか?」
「うん、平気だよ。ごめんね、心配させちゃって……」
「いや、いいんだ……」

部屋に戻った時、幽羅はもう起きていた。
一応、体力は回復したようだ。

「あ、咲耶ちゃん、もしかしてそれって……」
「ああ、約束通りだな。戻ったら試しに着替えてみるのもいいんじゃないか?」
「うん!」

幽羅に笑顔が戻った。やはり、幽羅は笑顔が一番だ。

「さて、では帰ろうか。世話になったな。」
「いいのよ。後の事は、私達でやるわ。」
「うむ。では、行くか。」

帰ったら報告書を書く必要がある。
だが……少々面倒だ。何しろ、本来存在すべきでない存在がそこにいたのだ。
この件は、水面下でなければならない。厄介な事だ。



その日の夜。
館に戻り、自分の部屋でゆっくりと本を読んでいた時の事だった。

「咲耶ちゃん、入るよ?」
「ん?ああ。」

来たのは幽羅だった。やはり、今日の事だろうか。

「あのね……今日、雪乃ちゃんと羽衣ちゃんに聞いたんだけど、私が別人みたいに見えたって……」
「……ああ、そうだったな……」

……当然だろう、な。雪乃は恐らく感づいたかもしれないが……

「でも私……その時にはもう何が起こってたかわからないの。意識が無かった……」
「意識を失う直前、どんな感覚だった?」
「なんだろ、突然何かが割り込んできた感じだった……」

恐らくはエアリナの干渉。強制的に幽羅の意識を封じさせたんだろう。

「でも……凄く、懐かしい感じがした。ずっと前に、感じたような……そんな気がする。」
「……あの時のお前は、本当に別人のようだった。あの強烈な魔力は……何か、別の意思が動いている。」
「咲耶ちゃん……本当は……ううん、なんでもない……」
「幽羅……」

……気づかれたか。だが、仕方あるまい……

「ごめんね、もう大丈夫……私、もう寝るよ。」
「ああ……おやすみ、幽羅。」

無言で部屋を出ていた。表情は暗かった。

「……我に出来る事は……」

……もう、我に出来る事は殆ど無いだろう……
後は……そう、幽羅自身で何とかするしかないのだ……
PR
Add a comment:
name
title
e-mail
URL
color
comment
pass
Comment:
Trackback:
Trackback URL:

忍者ブログ [PR]