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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「その槍は……!」
「目には目を、怨念には怨念をとでも言っておこうか。」

具現化したのは、桜の枝を元にした槍。
とは言っても只の槍ではない。怨念桜の力を持つ槍だ。
強力が故に、他者への影響も大きい。だから二人を遠ざけていた。

「ふふっ……そっか。ならあたしも本気を出してあげるよ!!」

彼女も同じく、槍を具現化させていた。
黒い炎を纏った、あの時具現化させたものとはまるで別物の槍。
黒の刃……全く、気配が違う……

「……いい物を持っているな。」
「貴方と同じだよ。」
「ふん、見くびるなよ。貴様とは違う。」
「戦ってみればわかるよ……あたしと貴方が同じって事!!」

一閃、激しく衝突する互いの武器。
力と力が押し合う、戦いの世界。

「やるな……だがっ!!」

一度相手を吹き飛ばし、間合いを取る。あまり長い時間は戦えない……

「てやぁぁぁぁぁっ!!」
「えっ!?」

相手が体勢を崩している部分に追撃を掛ける。一気に踏み込んで奴との距離を詰めた。
そして目の前に来た瞬間、地面を蹴った。
奴の反撃をかわして宙に舞う。そこから奴の頭めがけ急降下していく……

「これで……!!」
「ちっ……そんな物っ!」

寸での所でよけられ、槍が地面に突き刺さる。すぐに抜いて体勢を整え、再度対峙する。

「……一筋縄では行かない、といった所だな。」
「あたしに教えてくれたのは咲耶様だもの。さっきはちょっと危なかったけどね。」
「ふん、あれが我の全てだと思うなよ。貴様は必ず殺す。我が知る羽衣を取り戻す!!」

武器がぶつかり合う。一進一退の打ち合い。
一瞬の気の緩みが死を招く。そんな極限の戦いを、我は楽しんでいた。
この感覚は……間違いなく、過去の我そのもの。

「ふふ……やっぱり、あたしと同じだよ……!!」

そんな声が聞こえたが、気にもならなかった。
いや、気にする必要もなかった。体の動きが更に研ぎ澄まされていく。

「どうした!その程度の動きでは我は倒せぬぞ!!」
「うっ、くっ……!」

奴の体勢が崩れ始める。そろそろ決着をつけるか……
だが、その前にやっておかなければならない事がある。

「……時間を掛けさせるわけには行かない。今ならまだ間に合うからな……!!」
「きゃあっ!?」

強烈な足払いをお見舞いし、奴は倒れた。起き上がろうとする奴の喉に刃を向ける。

「!!」
「そこまでだ。これ以上、羽衣の体で身勝手はさせん。」
「ふ……ふふ……いいの?このままあたしを殺して。あたしが死んだら、あの子も死んじゃうんだよ?」
「……聞こえているだろう、羽衣!」

もしこれが無理だったとしたら……だが、今は……と。

『咲耶……様……』
「な……そんな、あたしが消したはずなのに……!?」
「間に合ったようだな……」

頭の中に直接響く声。間違いなく、それは本来の羽衣の声だった。
あまりにもか細い声ではあったが……

「くっ……往生際が悪いね……!」
『咲耶様……お願いです……どうか、僕を殺してください……』
「羽衣……安心しろ、御主に最後の機会を与える。だが、それを逃せば御主は死ぬ。」

……使うべきではない術。だが、使うなら今しかない……!

「ど、どういう意味……!?」
『はい……わかり、ました……』

羽衣の覚悟は聞き遂げた。我は槍を持つ手に力を込める。

「……怨念よ、最期に祈るのだな。羽衣と言う存在が、貴様を真の意味で解放する……」
「嘘……や、やめて……っ!」

槍を大きく振り上げ、そのまま胸目掛け、突き立てた。
生々しい音と溢れ出す鮮血。奴は一瞬驚愕の表情を見せた。
そして何も言う事無く、そのまま目を閉じた。

「……さぁ、後は御主の番だ、羽衣……」

奇跡が起こる事を信じて、我はその身を抱いた。
まだ体は温かい。だが、少しずつその温もりは消えていっている。

「頼むぞ……御主は、弱い存在ではなかろう……?」

燃え盛る業火の中、我はただ、羽衣を抱き、見守るだけだった……
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