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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「……羽衣?」

書斎で日記を読んでいた時、ふと、羽衣の気配を感じた。
……いや、限りなく羽衣に近い気配、と言うべきか。一瞬ではあったが、力強い物だ。
これはまるで……本来の神の力。

「……まさか。」

奴から聞いた事がある。神界では、神が不在になる事があると。今でもその空白は発生している。
随分といい加減な物だが、神界における上位神の定義を考えれば、有り得ない話ではない。
一つの力に対し、特に得意とするものを持つ神族……可能性としてはあるのだろうな……
大きな力を扱える存在は稀だ。そして、本来遠い場所にいるはずの羽衣の気を感じた。
自らと対面した事で、その本質が見えたのかもしれないな。
……羽衣が、炎を司る神に、か。

「……さて。」

日記をしまい、書斎を離れる。後は、羽衣次第だろう。
……変えてみせろ、羽衣。過去を断ち切り、未来を手に入れろ。



炎は消え、闇は晴れた。けれど、そこに羽衣の姿は無かった。
見回すと、少し離れた所に神王様が立っていた。

「羽衣……!?」
「彼女は、決着を付けに行ったよ。後はもう、私達がどうこう出来る物じゃない。」
「でもっ……!」

あれ程の怨念を、たった一人で背負わせている。
何か……何か出来ないのか……?

「……これは彼女自身が決めた事だ。今は、信じてあげよう。信じて、帰りを待とう。」
「神王様……」

……助けてあげたい。でも、それは叶わない。
今はただ、祈るしか無い。羽衣が無事に戻ってきてくれる事を……

「それと、私達はやらねばならないことがある。もしかしたら、ここで邪神が出ていた可能性もあるからね。」
「……堕落した神、人を喰らい糧とする、か……僕達で真偽を確かめなければ。」

今、僕達にしか出来無い事がある。全てを終わらせるために、出来る事をやろう。
羽衣が、無事に戻ってきてくれた時のために……



生きたかった。もっと、生きたかった。でもそれは叶わなかった。
憎い。あたし達を殺した奴らが憎い。だから殺す。殺して、同じ苦しみを与えてやる。

「でも、それはもう意味が無い。今あの村で住む人々は、もう同じ過ちは繰り返さない。
 これ以上犠牲は出ない。もう、終わったんだよ。」

……もう、止められないの。恨みは積み重なる。あの村の全てを食い尽くすまで……

「なら、僕が止める。全て終わらせる。」

どうやって?例え貴方が神になっても、こんな怨念をどうにか出来るの?

「出来るよ……今の僕なら。この力は、今この瞬間の為にあるんだから。
 この力は、壊す為だけじゃない。正す為の力でもある。
 例え僕がどうなろうとも、やってみせる。」



負に囚われた者に、安らかな眠りを。


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