それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
「ほえ~……」
「館の割には小さい方だが、いい館だろう?」
「こんな所に住んでいたんですね……凄いです。」
この館は、数年前にこの館の元所有主の友人から譲り受けた館だ。
少々交渉に手間取ったが、今はすっかり落ち着いている。
「神界には、これぐらいの大きさの館は無かったのか?」
「僕が住んでいる場所の近くにはありませんでしたよ。これは凄いなぁ……」
「さぁ、立ち話もなんだ。中に入ってゆっくり話をしよう。」
「あ、はい!」
「中も立派なんですね。」
「話によれば、どうやら昔のままの状態でそのまま残っているらしい。遺留品もそのままだ。」
「そうなんですか?それじゃあ咲耶様の言っていたのは……」
「こっちの部屋だ。」
案内したのは元の主人の書斎兼寝室。
我も何度か入った事がある部屋。
中は明かりをつけても暗く、少し埃っぽい場所だ。
「ここが……あ!」
そして真っ先に目に付くのが、壁に飾られた赤いバンダナと、灰色のマント。
我も最初はこの二つが一体何を意味するのかわからなかった。
が、その主人の日記を読んで行く内に、彼がどのような人物だったのか、
多少なりとも理解したつもりではいる。
「これ……間違いない、僕があの時見た……!」
「やはり、ここに来て正解だったようだな。」
「はい!そっかぁ、ここに住んでいたんだぁ……」
バンダナとマントを見る羽衣の目は輝いていた。
過去にこの世界を教えてもらったここの元主人が、羽衣にとって忘れられない人なのだろう。
「……凄い、ここの本棚、全部日記だ!」
「どうやらそれなりに几帳面な男だったらしい。ざっと目を通したが、かなり細かく書かれていたぞ。」
「じゃあ、もしかしたら僕の事も……」
「ああ、もし人物が一致するのであれば書いてあるだろうな。」
と、そこまで言った時、不意に何か、とてつもない邪悪な気配を感じた。
……どう考えても羽衣から感じられた。いや、だが……
「……っつ!?」
「さ、咲耶様!?どうしたんですか!?」
「い、いや……今日は少々はしゃぎ過ぎたようだ……羽衣は、ここで日記を探すといい。」
「いや、でも……」
……気のせいでは無さそうだが……羽衣に、何かあるのか……?
「我なら大丈夫だ。少し休めばすぐに回復するさ。」
「そう、ですか……」
我は羽衣を残し、部屋を出た。
……何だったんだ?今のは……
「羽衣ちゃん、まだ日記を探しているのかな?」
「そうだな……かなりの数とはいえ、そろそろ当たってもおかしくないとは思うのだが……」
「私、少し様子を見てきますね。」
「ああ、頼む。」
雪乃が羽衣がいる部屋に様子を見に行った。
……もう一時間は経っているが、そんなに時間が掛かっているのだろうか?
が、直後慌しい足音とともに雪乃が戻ってきた。
「た、大変ですっ!羽衣様が……!!」
「何、どうしたっ!?」
我は急いで部屋へと向かった……何か、とても嫌な予感がする。
「はぁっ、はぁっ……い、いやっ……入って、こないでぇ……」
「どうしたっ!?おい、しっかりしろ!羽衣!!」
「ああっ……こ、こない……で……いやぁぁぁぁっ!!」
「羽衣っ!!目を覚ませっ!!」
こうしたくは無かったが、我は少し力を入れて頬を叩いた。
「はうあっ!?……あ、あれ……?咲耶様……?」
「ふぅ……やれやれ、どうなるかと思ったぞ。」
「ぼ、僕……今……うっ!?」
呻き出す羽衣を抱え、急いで我の寝室へと向かった。
「羽衣!無理はするな……!」
「ご、ごめん、なさい……」
額には大粒の汗、顔色はかなり悪い。
……一体、何が起こったのだ……?
すぐに服を着替えさせ、我の寝室で羽衣を休ませる事にした。
突然の事態に少々動揺してしまったようだが、今は落ち着いてくれたようだ。
「ごめんなさい……咲耶様。僕のせいで、こんな事になってしまって……」
「何、羽衣が持ち直してくれてよかったよ。本当にどうなるかと思ったぞ……」
……しかし、気になる点もある。
あの時羽衣から感じられたとてつもない邪悪な気配。
そして、羽衣が見ていた物……過去に、何かあったのだろうか……?
「なぁ羽衣。お主は、過去の事を覚えているか?」
「いや、それが……部分的にしか思い出せないんです。」
「……それは、基本的にいい事とか、嬉しかった事だけ、か?」
「え?いやまぁ、確かにそうですけど……不思議と、悪い事は殆ど覚えてないんです。」
ここで一つの可能性が浮上した。それは、羽衣が何らかの記憶操作を受けている事。
……過去に何か絡んでいるとしたら、やはり思い出させてはいけない記憶なのだろうか。
「……そうですね。咲耶様なら、この大陸に来た本当の理由を言ってもいいかもしれません。」
「……空白になった過去を見つけるため、か。」
記憶を取り戻す旅……か。果たして、何処までそれを見つけられるか……
「そうです。でも、もしかしたら……思い出しちゃいけない過去なのかもしれませんね……」
「……羽衣、今日はここで眠るといい。」
「え?……咲耶様はどうするんです?」
「今日は少々眠れそうに無い。今回の一件、何かが噛んでいそうでな。」
羽衣が見た日記……そこに手がかりがあるはずだ。
「何、今日は他の者の部屋で眠るとしよう。それに、調べ物もあるからな。」
「……本当に、ごめんなさい……」
「何、気にする事は無いさ……何かあったら、すぐに呼んでほしい。」
「わかりました……ありがとうございます。」
……一人にするのは少々心配ではあるが、今なら大丈夫だろう……
もう一度、あの日記を読み直す必要がありそうだ。
「館の割には小さい方だが、いい館だろう?」
「こんな所に住んでいたんですね……凄いです。」
この館は、数年前にこの館の元所有主の友人から譲り受けた館だ。
少々交渉に手間取ったが、今はすっかり落ち着いている。
「神界には、これぐらいの大きさの館は無かったのか?」
「僕が住んでいる場所の近くにはありませんでしたよ。これは凄いなぁ……」
「さぁ、立ち話もなんだ。中に入ってゆっくり話をしよう。」
「あ、はい!」
「中も立派なんですね。」
「話によれば、どうやら昔のままの状態でそのまま残っているらしい。遺留品もそのままだ。」
「そうなんですか?それじゃあ咲耶様の言っていたのは……」
「こっちの部屋だ。」
案内したのは元の主人の書斎兼寝室。
我も何度か入った事がある部屋。
中は明かりをつけても暗く、少し埃っぽい場所だ。
「ここが……あ!」
そして真っ先に目に付くのが、壁に飾られた赤いバンダナと、灰色のマント。
我も最初はこの二つが一体何を意味するのかわからなかった。
が、その主人の日記を読んで行く内に、彼がどのような人物だったのか、
多少なりとも理解したつもりではいる。
「これ……間違いない、僕があの時見た……!」
「やはり、ここに来て正解だったようだな。」
「はい!そっかぁ、ここに住んでいたんだぁ……」
バンダナとマントを見る羽衣の目は輝いていた。
過去にこの世界を教えてもらったここの元主人が、羽衣にとって忘れられない人なのだろう。
「……凄い、ここの本棚、全部日記だ!」
「どうやらそれなりに几帳面な男だったらしい。ざっと目を通したが、かなり細かく書かれていたぞ。」
「じゃあ、もしかしたら僕の事も……」
「ああ、もし人物が一致するのであれば書いてあるだろうな。」
と、そこまで言った時、不意に何か、とてつもない邪悪な気配を感じた。
……どう考えても羽衣から感じられた。いや、だが……
「……っつ!?」
「さ、咲耶様!?どうしたんですか!?」
「い、いや……今日は少々はしゃぎ過ぎたようだ……羽衣は、ここで日記を探すといい。」
「いや、でも……」
……気のせいでは無さそうだが……羽衣に、何かあるのか……?
「我なら大丈夫だ。少し休めばすぐに回復するさ。」
「そう、ですか……」
我は羽衣を残し、部屋を出た。
……何だったんだ?今のは……
「羽衣ちゃん、まだ日記を探しているのかな?」
「そうだな……かなりの数とはいえ、そろそろ当たってもおかしくないとは思うのだが……」
「私、少し様子を見てきますね。」
「ああ、頼む。」
雪乃が羽衣がいる部屋に様子を見に行った。
……もう一時間は経っているが、そんなに時間が掛かっているのだろうか?
が、直後慌しい足音とともに雪乃が戻ってきた。
「た、大変ですっ!羽衣様が……!!」
「何、どうしたっ!?」
我は急いで部屋へと向かった……何か、とても嫌な予感がする。
「はぁっ、はぁっ……い、いやっ……入って、こないでぇ……」
「どうしたっ!?おい、しっかりしろ!羽衣!!」
「ああっ……こ、こない……で……いやぁぁぁぁっ!!」
「羽衣っ!!目を覚ませっ!!」
こうしたくは無かったが、我は少し力を入れて頬を叩いた。
「はうあっ!?……あ、あれ……?咲耶様……?」
「ふぅ……やれやれ、どうなるかと思ったぞ。」
「ぼ、僕……今……うっ!?」
呻き出す羽衣を抱え、急いで我の寝室へと向かった。
「羽衣!無理はするな……!」
「ご、ごめん、なさい……」
額には大粒の汗、顔色はかなり悪い。
……一体、何が起こったのだ……?
すぐに服を着替えさせ、我の寝室で羽衣を休ませる事にした。
突然の事態に少々動揺してしまったようだが、今は落ち着いてくれたようだ。
「ごめんなさい……咲耶様。僕のせいで、こんな事になってしまって……」
「何、羽衣が持ち直してくれてよかったよ。本当にどうなるかと思ったぞ……」
……しかし、気になる点もある。
あの時羽衣から感じられたとてつもない邪悪な気配。
そして、羽衣が見ていた物……過去に、何かあったのだろうか……?
「なぁ羽衣。お主は、過去の事を覚えているか?」
「いや、それが……部分的にしか思い出せないんです。」
「……それは、基本的にいい事とか、嬉しかった事だけ、か?」
「え?いやまぁ、確かにそうですけど……不思議と、悪い事は殆ど覚えてないんです。」
ここで一つの可能性が浮上した。それは、羽衣が何らかの記憶操作を受けている事。
……過去に何か絡んでいるとしたら、やはり思い出させてはいけない記憶なのだろうか。
「……そうですね。咲耶様なら、この大陸に来た本当の理由を言ってもいいかもしれません。」
「……空白になった過去を見つけるため、か。」
記憶を取り戻す旅……か。果たして、何処までそれを見つけられるか……
「そうです。でも、もしかしたら……思い出しちゃいけない過去なのかもしれませんね……」
「……羽衣、今日はここで眠るといい。」
「え?……咲耶様はどうするんです?」
「今日は少々眠れそうに無い。今回の一件、何かが噛んでいそうでな。」
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「何、今日は他の者の部屋で眠るとしよう。それに、調べ物もあるからな。」
「……本当に、ごめんなさい……」
「何、気にする事は無いさ……何かあったら、すぐに呼んでほしい。」
「わかりました……ありがとうございます。」
……一人にするのは少々心配ではあるが、今なら大丈夫だろう……
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