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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「今日は肌寒いな。」
「そうですね……」

換気のために窓を開けると、冷たい風が流れ込んで来た。
夏の暑さは感じられない。この冷たさは、冬を連想させる。
雪乃は何処か寂しげな表情を見せている。

「……大丈夫か?」
「はい……今は、まだ。」

冬に近づくにつれ、雪乃の気配が変わる。これは人の気配ではない。
種族としての雪女の血を引く雪乃は、冬に近づくほどその力が高まる。
……戦いにおいては、その能力で優位に立つ事が出来る。
だが……血の影響は平時でも現れる。

「不安か?」
「……不安は感じます。ですが、これは仕方の無い事ですから……」

今はまだ秋、その影響は大きな物ではない。だが、これが冬になれば話は別だ。
あの冷酷な雪乃は……あまり、見たく無い。

「仕方ない、か……そうかもしれないがな……」

もし人間であれば、雪女としての部分を抑えようとするだろう。
だが、我は精霊……人とは違う。魔は障害であれば排除するが、そうで無ければ手を出さない。
……複雑だ。抑えておくべきだと言う我と、そのままにしておけと言う我が居る。

「大丈夫ですよ。今の私は、以前とは違いますから。それに……もしもの時は。」
「……そうだな。」

かつて雪乃と交わした約束。もしも力が抑えきれなくなったその時は、我の手で止めて欲しいと。

「……あ、そう言えば薬が少なくなってきてましたよね?」
「ん?あぁ、確かにかなり数が減っていたな。そろそろ補充するべきだと思うが。」
「それじゃあ、私が買って来ますね。」
「分かった。」

雪乃は鞄と財布を持って、館を出た。
……ある意味助かった。これ以上、この話はしたくなかったのだ。

「……信じているぞ、雪乃……」

また、冷たい風が吹き込む。この風だけは、秋よりも冬を連想させる物だった。



「風が冷たい……うーん、急に冷えてきたね~。」
「そうですね……つい最近まで暑かったなぁって思ってたんですけど。」

幽羅さんとエリアスの街を歩いていると、冷たい風が吹いて来た。
街路樹の木の葉も少し黄色くなって、落ち葉も多い。
でも、それ以上に気になるのは……幽羅さんの格好。
いつも着ているあの精霊の服って、考えてみればかなり薄着のはず。

「ところで幽羅さん、その格好で冬とかは寒くないんですか?」
「あたしは大丈夫だよ。あたしの周りの風をちょっと抑えれば寒さ対策もバッチリ!」
「なるほど……」

風を操るとそんな事も……流石は風の精霊って事かな。
今は大精霊になって、出来る事が多くなったって言っていた。
……その分苦労する事もある、とも言ってたかな。

「でも、流石に限度はあるけどね。その時はちょっと厚着になるよ。」
「そうですよね、その格好のまま冬の……それこそ、雪原なんて行ったら……」
「間違いなく凍え死ぬよ。幾ら大精霊でも体を持ってたら多分無理。」

大精霊であっても、肉体を持っている時は人間と同じ……咲耶様がそう話していた。
下手すれば死ぬとも……咲耶様や幽羅さんは、そんな状況の中戦っている。
冗談混じりで幽羅さんは言っているけど……本当は相当危ないんだろうなぁ……

「今思えば、相当無理してるかな。今更なんだけどね。
 まさか肉体を持ったまま引継ぎをやるなんて思っても無かったし。」
「……大変、ですよね。」
「そうだね……でもね、肉体を持ったままの引継ぎは例外だったとしても……
 引継ぐ事そのものは、大精霊として当たり前の事だからさ。そんなに気にしてないよ。」

そう言って微笑む幽羅さんは……本当に大精霊なんだなぁと思う。
元気な笑顔とは違った、やさしい笑顔だった。

「……あ、そうだ!最近また新しい洋服が出たらしいから、見に行こうよ!」
「あのお店ですか?いいですね、行きましょう!」

……やっぱり、大精霊になってもこういう所は幽羅さんらしい。
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