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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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結局、海にはかなり長い時間いる事になり、見れば海水浴客がそれなりに減っていた。
我々も荷物を片付け始めていた、そんな時の事。

「ん……?」

少し遠くの方、客のいない場所に、見覚えのある服装の少女がいた。

「……羽衣か?」

だが、あの時見た羽衣とは印象が違った。
海を見つめるその目は、まるで世界全てを見ているかのように、遠い目をしていた。

「……雪乃、幽羅。すまないが片付けを済ませておいてくれないか?少し用が出来た。」
「用、ですか?」
「ああ、少々、な。」

二人は不思議そうな顔をしていたが、我の目線の先にある人物に気づいたのか、
一つ頷いてそのまま片付けに戻った。



「羽衣、こんな所で何をしている?」
「ひゃっ!?さ、咲耶様っ!?」

突然声を掛けられたせいか、かなり驚かせてしまったようだ。

「ど、どうしてここに?」
「ああ、休みを取って海水浴に来たのだ。まぁ、もう帰る所だがな。」
「そ、そうなんですか……」

羽衣はかなり驚いているようだった。まぁ、普通なら有り得ないからな……

「意外か?」
「い、いえ……上位神族の方々も、この海に来る事が多いそうですし……」
「ほほう、そうなのか。それで、羽衣は何の用で来たのだ?」
「……昔、まだ人間だった頃に教えてもらったんです。この場所を……」

そう言うと、羽衣は空へと視線を向けた。

「僕に、この世界を教えてくれた人です。元々僕はこの大陸の人間ではないですから……」
「……ふむ。」
「多くの世界を旅していて、色々な事を僕に教えてくれました。ずっと前の事ですけど……」

空は少しずつ、赤く染まっていく。夕焼けの空は、普段見る青い空とは違う表情を見せている。

「……ここに来た理由は、特に無いんです。ただ、海が見たかった……それだけなんです。」
「そうか……」

また視線を海に戻す。夕暮れの光で、海は輝いていた。
蒼い海から、紅の海へ。過去を思い出させる、追憶の海。
……と、不意に何かが頭を過ぎった。

「羽衣、その旅人がどんな格好をしていたか、覚えているか?」
「え?格好、ですか。」
「ああ。」

そう、その旅人の事だ。もしもこの後羽衣が言う事と、我の思う事が一致すれば……

「えっと、赤くて派手な模様が描いてあるバンダナに、灰色のマント……」
「本当にそうなのか?」
「え、ええ、そうですけど……もしかして、咲耶様、ご存知で?」

見事に一致した。間違いない。羽衣が会った旅人……
それは、我々が今住んでいる館の元主人だ。

「ああ、そうか……羽衣、もしかしてお主はその旅人の事を調べにこちらに来たのか?」
「……半分はそうです。もう半分は……これは流石に、言えません……」
「いや、十分だ。羽衣、この後我が館に来るがよい。探している物が見つかるかもしれん。」
「え、ええっ!?そ、そんな咲耶様……!?」

偶然の一致……恐らく、羽衣が探しているであろう物もあるだろう。
我は半ば強引に羽衣を引っ張る形で、雪乃と幽羅がいる場所へと向かった。

「二人とも、今日は羽衣を館に招待する。それでいいな?」
「え?大丈夫ですけど……どうしたんですか?急に。」
「どうやら羽衣の探している物が館にあるのかもしれないのだ。」

突然ではあるが、羽衣の為だ。これで、何かを掴めればいいのだが……

「へぇ~、そうなんだ。ね、それだったら泊まっていかない?」
「ふむ、それもいいな。この調子だと、宿を取っているようにも思えんからな。」
「う……あ、あはは~……」

羽衣は苦笑していた。どうやら図星らしい。

「決まりだな。それじゃあ、今日の所は引き上げるとしようか。」
「はい。」
「は~い!」

今日は何かと、いい意味で忙しい一日だ。
まだもう少し続きそうな気がするが……

「ところで……咲耶様。」
「ん、何だ羽衣?」
「い、いえ……その水着……とても、綺麗で……と言うか妖艶で……」
「ぶっ!?」

……思わず噴出してしまった。
まさか羽衣の口から妖艶という単語が出てくるとは、全くの予想外だった。

「……よ、妖艶とはまた……とんでもない単語が出てきたな……」
「でも咲耶ちゃんがその気になれば、男の人から精気を奪う事だってできむぐぅ!?」

先を言おうとした幽羅の口を塞ぐ。
幾らなんでも……それはやってはいけない事だ。不可能ではないのが我ながら怖いのだがな……

「ば、馬鹿な事を言うなっ!!」
「咲耶様……僕、なんと言っていいか……」
「ち、違うぞ!断じて違うからなっ!!」

こんな所で誤解されるのは困るぞ……妙な事になるかもしれん……

「やっぱりその水着はぴったりですよ、咲耶様。」
「雪乃……はぁ……」

微笑みながら雪乃が言う。
……本当に、色々と忙しい一日だ……
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