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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「……幽羅……」

桜木の空間、その聖域。羽衣の一件では肉体があるまま入ったが、
今は天音の力を借り、一時的に精神と肉体を切り離し、精神体として身を休めていた。
久々にこの桜木の着物の姿になっていた……気が安らぐ。
魔力等の回復は、肉体を持っている時より遥かに早い。
が……まるで眠っているような我が肉体を横目に休むというのは、中々不思議な感覚である。

「咲耶様……大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。心配かけてすまないな、天音。」
「いえ……咲耶様が門を開いたと言う事は、何か一大事がある時なので、
 もしやと思ったのですが……幽羅さん、大丈夫でしょうか……?」
「……幽羅ならやり遂げてくれる。エアリナもいる。後は祈るだけだ……」

こういう時、己の無力さを知る。
戦いの場においては頼られる我であっても、幽羅には声を掛けてやる事しか出来なかった。
……仕方のない事ではあるが……

「……すまない、天音……少し、眠らせてくれ……引継ぎが始まれば、それで気づく……」
「はい……お休みなさいませ、咲耶様。」

今は無事を祈りながら眠ろう……終わった時、疲れている顔では幽羅に心配されてしまいそうだ。



咲耶様と幽羅さんがいなくなって、静かな館。
大精霊の引継ぎ……話は聞いた事があったけれど……まさか、幽羅さんが……

「あの……雪乃さん……咲耶様と幽羅さんは……大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫ですよ。必ず、戻ってきてくれますから。」

雪乃さんの言葉には、確かな自信があった。
それはきっと、僕以上に長い間、咲耶様と幽羅さんと一緒に過ごして来たからだと思う。
それこそ長い間、一緒に暮らして、戦ってきたんだ……僕の知らない事も、知っているんだと思う。

「今は……祈りましょう。お二人が笑顔で戻って来てくれる事を。」
「……はい。」

絶対に、大丈夫……そんな気がする。咲耶様と幽羅さんなら……



暗くて細い道。冷たい向かい風。
どうしても、体が震える。

『大丈夫?』
「……多分、大丈夫です……」

奥に進むのが、とても怖い。何か、入ってはいけない場所に入る、そんな気がして……

『心配しないで……今、ここには貴方とあたししかいないわ。
 今はあたし達以外、この聖域には立ち入る事は出来ない。』

そう言われても、何だか……沢山の目に見られている……そんな気がして。

「でも……」
『……怖いのは分かるわ。あたしもそうだった。どうしてあたしが大精霊に、って。
 今の貴方は、昔のあたしと同じ。これは……大精霊になる者として必ず通る道なの。』

少しずつ、月の光で明るくなってきた。
向かい風も止んで、震えも止まった。

『さぁ、もうすぐよ。』

なんだろう、とても、懐かしい感じがする……
ずっと前に来たような……でも、入った事は無い……

「あっ……」

少し先に、広い場所がある。あそこが、聖域……?

『ふふっ、久しいわね……行きましょう。』
「……はい!」

何だか、とても長かった気がした。
聖域は、もう目の前。私が……大精霊になる場所……
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