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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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手紙はその一通だけではなかった。
依頼の手紙も一通届いていた。

「これは……ふむ、そう難しい内容ではなさそうだな。」

依頼内容は、山岳地帯に出没する熊が凶暴化していて、
それを可能な限り討伐してほしい、というものだった。
前にも似たような依頼は受けた事がある。無論、全て無事に終わった。
だが、神王の言葉……もし、その影響が既にあるとすれば、一筋縄ではいかなくなる。

「一応、二人で行くか……」

雪乃は買い物で不在、幽羅は……あの状況だ。ここは羽衣に頼むか……
と、不意に背後から強烈な気配を感じた。

「……咲耶ちゃん……」
「……幽羅?どうした?」

力の混濁……どうやら、開放されない魔力が溜まってきているのだろう。
……なら。

「その依頼……私が、行ってもいいかな?」
「……構わん。その様子では、少し体を動かしたほうがよさそうだからな。」
「……うん。」
「準備しておけ。すぐに出るぞ。」

武器を携え、全ての準備を整える。問題はない。幽羅はどうだろうか。

「幽羅、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。」

表情に元気さはない。やはり、影響が大きく出始めているのだろう。

「危険と思ったら下がれ。いいな?」
「うん……」
「よし……では行くぞ。」

一路、山岳地帯へと向かう。無事に、事が済めばいいのだが……



到着し、状況を見たその瞬間から、事態は混迷していた。

「どうなっている……?」
「酷い……」

あちこちにコボルトが倒れている。傷の様子からして……爪によるものだ。

「他の冒険者がやったか、あるいは……熊がやったか。」
「でも、普通はお互いに干渉しないはずだったよね?」
「の、はずだがな……どうやら、影響というのは予想以上に大きく出ているかも知れん。」

ここまで大量に、しかも死骸を残したまま。
普通の狩人でも、ここまではしない。なら、それ以外を考えるのが妥当か。

「警戒していくぞ。何が出るかわからん……」
「うん、わかった。」

幽羅の魔力の昂ぶりを感じる。近距離用の武器を具現化していないあたり、魔法で挑むようだ。
少なくとも、この状況ではそれが正解だと思う。
少し進んだ所で、声が聞こえた。同時に、獣の鳴き声も。
それに……この、気配は……

「クッ……貴様等如きにッ!!」

低く、太い声。人ではない……これは……

「行くぞ、幽羅!」
「うんっ!」

走ってその場所へ距離を詰める。そして、その声の主が見えてきた。

「うぉぉぉぉっ!!」

そこにいたのは、白銀の人狼だった。存在は聞いていたが……まさかここで会うとは。
腰に巻いた白い布らしきものが靡く。それ以外は何も身につけていない。
黒い熊達に囲まれ、それに応戦している。

「……はぁっ!」

熊に気づかれない角度から強烈な飛び蹴りを当てる。
それに驚き、動きを止めた所で追撃をかける。

「てやぁっ!」
「力を貸して……お願いっ!」

同時に、幽羅の補助魔法が掛かる。一気に体が浮く感覚がした。
どうやら、あの人狼にも掛かったようだ。

「お前は……!」
「話は後だ!今はこいつらを叩くぞ!」

まだ数は多い。確実に、近くにいる者から叩いて行く。
と、遠くから詠唱の波動を感じた。

「二人とも、伏せてっ!」

幽羅の声が響く。近くの敵を倒したと同時に伏せた。
魔力が開放される。激しい突風が頭の上を掠めていく。
熊の巨体が簡単に吹き飛ばされていった。
中には高らかに宙に舞い、地面に叩き付けられた者もいた。

「何っ……なんて威力だ……」

人狼は驚きの表情を見せている。

「……よし、何とかなったか……」
「二人とも、大丈夫?」
「ああ、助かったぞ幽羅。」
「……桜木の姫に、風の精……まさか、こんな所で会うとはな。」

白銀の人狼の赤い眼が輝く。強い気配、間違いないな……

「……ここは危険だ。別の場所で話をしよう。幽羅もいいな?」
「ああ。」
「わかったよ。」

一度、この区域から出なくては。まだ気配が残っている……
ここから近い安全な場所は……治癒の聖所、そこに向かう事にした。
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