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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「よし、それじゃあ出るぞ。戸締りはいいな?」
「はい、大丈夫です。」
「久しぶりだねぇ、こうやってみんなでお出かけするの。」
「……そうだな。」

今日は珍しく私服。
普段の服装でもいいのだが、休日に戦士として依頼されるのはあまり好ましくない。
雪乃も普段の巫女服とは違う、すっきりした服装だ。
……変わりがないのは幽羅で、幽羅はあの格好で普通に通ってしまっている。
……何故かはわからないが。

「それにしても……咲耶ちゃんのそれ、派手だよね。」
「……言うな。これしかなかったのだ……」

……どうも我の服はかなり派手だ。まぁ、たまたま合うのがこれしかなかったためではあるが……
正直、恥ずかしい。

「ま、まぁいいだろう。とにかく行くぞ?」
「はぁい!」
「はい。」

エリアス王国街へ向かう。
普段は戦士として向かう場所だが、今日は違う。
……久々だな……こうして、ゆっくり出来るのも。



街は何時も人が多い。中心都市にして最大規模の王国、エリアス。
我も最初に見た時は驚いたものだ。

「やっぱり人が多いですね……」
「ほんとだね~。」
「こうも人が多いと、何が何だかわからんな。」

混み合う場所を避けながら、幽羅お気に入りの喫茶店へ向かう。
……いつの間に見つけたのやら。まぁ、話は何度か聞いているし、興味はあった。

「おっと。」

向かっている途中、誰かとぶつかった。が、その気配が人間の物ではなかった。

「はうぁ!?わわわ、ご、ごめんなさ……い!?」
「……ほほう、珍しいな。こんな所に神族がいるとはな?」

そう、この感覚は……奴と同じ、神族の物だ。
まさか、こんな所で神族と会う事になるとは。

「ふぇ!?あの、えと、その……」
「咲耶様?」
「咲耶ちゃん?」

突然の事に、ぶつかった少女は縮こまってしまった。
その少女は赤いドレスを簡素にした服を着ている。
そしてその目は青く、澄んでいた。
耳は……猫の、耳?これは……
しかし、ここで話を聞くのも難だな……

「幽羅、店まではあとどれくらいだ?」
「え?もうすぐだけど……」
「わかった。少々、彼女と話がしたい。」

突然の事に驚いていた雪乃と幽羅であったが、一応は理解してくれたようだ。
我はその少女の手を引き、店へと向かう事にした。



「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「四人だ。」
「かしこまりました。どうぞこちらへ……」

その喫茶店はかなり落ち着いた感じで、我が想像していたものとは違っていた。
幽羅にしては珍しいと、正直思った。
奥の方の席に座る。我はその少女と向かう合う形になった。

「御主、名前は?」
「は、はいっ!羽衣と申しますっ!」
「……うい……か。どうしてここに?」
「え、えと……ごめんなさい、これは……その……」

羽衣は俯いてしまった。言えない理由でもあるのだろう……

「いや、無理に言う必要はない。それと、もっと楽にしていいぞ?」
「い、いえ、そんな事はっ、大精霊様の前で……」
「やれやれ……今の我は、桜木の大精霊としてではなく、一人の人間として動いているのだ。」
「そ、そうなのですか……」

羽衣はかなり緊張しているようだった。まぁ、無理もない。
神界でも、我の名はそれなりに通っている。
ましては彼女は下位に当たる。こうなってしまうのもわかる気がする。

「ねね、羽衣ちゃんは何か、動物の生まれ変わりとか?」
「いえ、僕は元は人間だったんですけど……ちょっと、いろいろあって。」
「ふ~ん、そうなんだ。」

気になっていたのはその耳であった。
猫の耳……これは神族であれば大抵は人以外から生まれた場合に、
その動物固有の特徴が出る事が多いと聞く。

「それでは、羽衣様は神界の一般区域でお勤めを?」
「一応はそうです。」
「なるほど……」

まぁ、我も詳しくは神界については分からないが。
ただ珍しいのは、単独でこうやって動いている事だ。
まぁ理由は様々であろうがな……

「それで、羽衣はこの後行く場所でもあるのか?」
「はい、一応……神族になってからも、ずっと気になっている場所があって。」
「ふむ……そうか。」

その後、羽衣の話を聞いたりして、神界の情勢や、生活などを聞く事が出来た。
何かと忙しい仕事内容、上下関係等……あっという間に時間は過ぎていった。

「……む、もうこんな時間か。早いものだな。」
「あ……それじゃあ、僕はこれで。」
「うむ、今日はすまないな、突然こんな事になってしまって。」

他に用事もあったかもしれない……少々、悪い事をしてしまったか。

「い、いえっ!咲耶様とお話が出来てとても嬉しいです!」
「ふふっ、我も楽しかったぞ?」
「はいっ!ありがとうございました!」

店を出て、羽衣を見送る。羽衣は最後に、

「また、何処かでお会い出来たらいいですね!」

と言い残してくれた。



「ねね、咲耶ちゃん。」
「ん、何だ?」
「羽衣ちゃん、そのまま行っちゃったけど、何処か寝るとことかあるのかな?」
「一応旅をしているようでしたけど、どうなんでしょうか?」
「さぁな……だが、何も考えがないわけではないだろう?」

帰り際も、話題は羽衣の事だった。
人に紛れ活動している……感づかれる事もなく。

「……しかし、少々心配でもあるな。戦いには不慣れな感じがする。」
「あ、咲耶様もそう思いましたか。」
「うむ……戦いには向いていないようだが、まぁ最低限の護身術程度は覚えているだろう。」

神族とてこの世界にいる時は人間と同じだ。
それを解っていて来ているのだろうが……

「まぁ、我々が気にしていても仕方ない。時間も時間だ、少し急ごうか。」
「分かりました。」
「はぁ~い!」

……何だか、彼女とはまた近い内に会いそうな気がするな。
その時には、少し戦いについても教えておいた方がいいかもしれん……
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