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それぞれの想いは交差し、物語を紡ぐ。
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「……これか。」

書斎。一つだけ落ちていた日記を拾う。
……恐らく、この日記の何処かに羽衣の過去に繋がる部分があるのだろう。

その日記だけを持ち出し、一人リビングにあるソファーに腰掛ける。

「さて……」

保存状態はいいようだ。それなりに時間がたっているはずだが、劣化が殆ど見られない。
中身は……やはり、細かく書かれている。
暫くページを捲っていると、それらしき事が書かれている部分に辿り着いた。

「……なるほど、な……」

読み進めて行くにつれ、過去に羽衣の身に何が起こっていたのか、それを把握していった。
……ああ、思い出させるべきではなかっただろう。
だが、時間から考えて既にそれは崩壊している……
いずれ、対峙する事になろう……その一部分はこう書かれていた。



……こちらの大陸に来てから随分多くの街や村を渡り歩いてきた。
その中でも、この村は特に印象に残っている。
……それは、悪い意味で、だが。

私がここに立ち寄ることになったのは、休憩と補充のためだ。
まぁ前情報からしてそんなにいい場所では無い事は分かっていた。
村に伝わる祟り……それが少々、有名になりすぎていた。
まぁ、当の村人達に話を聞いたが、余りにも大雑把な話しすぎて理解できなかった。

そんな中だ。私は、とある少女に出会った。
名前は神楽火羽衣(かぐらびうい)と言う名の少女だ。
この地方の名前は独特な物が多いが、彼女は特に印象に残っている名前だった。
貧困層の少女だったが、それでも健気に生きている彼女に、私はその当時の時点での、
私が知りうる世界についての知識を教えた。彼女はそれをとても楽しそうに聞いていた。
その顔は今でも忘れられない。

だが、彼女と話している最中、突如として村人の若い衆から襲撃を食らう事になる。
なんでも、彼女が祟りの元凶だ~やら、こいつのせいで村が何時までも貧困層のままなんだ~とか。
私はその時本気でキレた(この表現もどうかと思うが)。
「何処にそんな根拠がある!」と言い返してやったよ。

後に彼女に話を聞いたら、もう何度も迫害に遭っているとか……
どうしてこの村を出ないのかという問いに、彼女は、
「出たら村の人が祟りでみんな死んじゃうの」と答えた。
……まさか、な。だがあながち間違いではなかったのかもしれない。

翌日。村人が一人、余りにも無残な姿で発見された。
正直、思い出したくないほど無残だった。あれほどグロテスクな物は無いよ。
「またあたしが一人殺してしまった」と彼女。……自覚はあったのだろう。
迫害を受けていても殺されていない点から、もしかしたら彼女が死んだら、
皆道連れになる可能性があるのかもしれない。自分で考えて、とても悲しかった。
何とかして、彼女をこの残酷な運命から救い出したかった……
だが私の旅の歩みをここで止めるわけにも行かなかった。
次の船までにまた戻らなくてはならないから……

別れ。彼女を連れてやりたかった。だが、多くの村人を犠牲にするのは出来ない。
苦しい判断だった。だが彼女は、「あたしなら大丈夫です」と、笑顔で送り出してくれた。
そして私はこの村を出た。

今この日記を書いているのは、その村に近い別の街の宿屋。
実は私が村を出た数日後、また一人、村で死人が出たようだ。
……私に、手段があれば……もっと力があれば……
だが、今更私に出来る事は何も無い。
今、私は先に進まなくてはならないのだ……



「祟り、か……」

ここから先は、また別の街の事が書かれていた。
どうやら、羽衣にまつわる事はこれだけのようだ。
だが、これではっきりした事もあり、そして新たな疑問も生まれた。
人間だった頃の羽衣の様子、そして、何故祟りの原因として羽衣が迫害を受けていたのか?

「こればかりは、今後の動きでしか判断できないな……」

今の我ではどうする事も出来ない問題が、また一つ増えてしまった。
だが……この件は案外早くケリがつくだろうと、不思議と感じていた。

「羽衣……お前は、弱い者では無かろう……?」

既に眠っている羽衣へ、届くはずの無い呟き。
過去、現在、そして未来。恐らくすぐに、羽衣の全てを変えてしまうような出来事が起こるだろう……
その時が来たら、我々で羽衣を支えてやらねばな。

「さて……寝るとしよう……」

日記を書斎に戻し、リビングのソファーに横たわる。
たまにこうしてここで寝る事もある。

「……羽衣……」

今我に出来る事は、あの時のここの元主人のように、何も無いのだ……
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